動きのあるユーザーにも対応可能な裸眼立体視ディスプレイ

2022/12/08 13:00 By Tech Manage

ユーザーの位置に追従して3D表示を行うパララックスバリア/レンティキュラレンズ方式の裸眼立体視技術

Advantages

  • メガネなどのデバイスを必要とせず、高解像度かつ高輝度の3D映像を提供
  • 顔認識技術を使いユーザーの頭位置を測定することで、立体ディスプレイの利便性を向上
  • ユーザーが複数いても、それぞれの視点からみた3D映像を提供
  • 医療・工業用途や、エンターテインメントなどへ幅広い分野に応用可能

Background and Technology

裸眼で立体表示を行う技術とは、眼鏡などの特殊な器具を必要とせず、物体が3次元的に浮き上がっているように見える表示技術である。裸眼立体視機器は一般に、ステレオカメラなどで撮影した右目用・左目用画像を表示するためのディスプレイと、それら画像をユーザーの右目・左目に適切に届けるための光学系からなる。裸眼立体表示を可能とする方法は多数存在するが、例えば、右眼と左眼に異なる映像を見せることで視差を生じる方式として「パララックスバリア(視差バリア)方式」や「レンチキュラ方式」がある。眼鏡などの特殊な器具を必要とせず、風景などの解像度の高い立体映像の表示に向いている。ディスプレイに表示された右目用と左目用の映像を、パララックスバリア方式では格子状のスリットを通じて、レンチキュラ方式ではかまぼこ状のレンズを通じて、それぞれ左右の眼に届けることで立体表示を実現する。従来の技術では、いずれの方法もユーザーが動いてしまうと右眼・左眼用の映像がずれるため立体像が再構築されないという、ユーザーの自由度を損ねる問題があった。
裸眼立体ディスプレイ研究の第一人者である筑波大学の掛谷英紀先生は、顔認識をつかった頭部の位置測定技術を導入することで、ユーザーの自由度の問題を解決した。すなわち、レンチキュラ型の場合、ディスプレイが表示する画像の位置をユーザーの頭部の位置に合わせて動かすことで、右眼・左眼用の映像を正確に眼に届けて立体表示を実現する。下図の例では、透過型LDC パネルが右目と左目用の映像を高速で切り替えながら表示しつつ、LCDパネルの裏にある装置(Dot Matrix Light Source)が作る点状の光源がユーザーの頭部の位置に合わせて動くことで、ユーザーの右目または左目のみに映像を投影することができる。これにより、ユーザーが動いたとしても正しい3D表示ができる、レンチキュラ型やパララックスバリア式装置を提供できる。さらに、複数人分の点状光源を生成できるように工夫するだけで複数ユーザーがそれぞれの視点から立体視することができ、既に研究室では装置開発と実証が済んでいる。

掛谷先生による技術解説を、以下のURL(JSTの新技術説明会)から、是非ご覧ください。この発表では、新開発のレンズ技術(※)を中心に、先生のご研究全般を説明しています。

※ 新開発のレンズ技術の詳細はこちらをご参照ください

(図は、掛谷研究室学生博士論文(石塚2016)より引用)

Expectations

裸眼3Dディスプレイの開発・製品化に取り組む企業様へ、筑波大学の立体表示技術に関する情報やノウハウをご提供できます。自社のリソースによる製品開発を主体的に行う企業に対して、大学は研究成果の提供や技術的なコンサルティング、特許のライセンスを通して開発をサポートします。
また、掛谷先生はインテグラルイメージングという別裸眼3Dディスプレイ技術も研究しています。詳細はこちらをご参照ください。

Publications

レンチキュラ方式に関する最新技術を報告する文献
Optics Letters Vol. 47, Issue 2, pp. 301-304 (2022)

Patents

特許第6411025号 他特許や出願が多数。

Researchers

筑波大学 システム情報系 准教授 掛谷英紀

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