歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)に対するゲノム編集治療薬

2025/07/14 14:32 - By Tech Manage

ATN1遺伝子のCAGリピート上流にストップコドンを導入することで病態進行を抑制

Advantages

Background and Technology

ポリグルタミン病は、特定遺伝子におけるCAGリピート配列の異常伸長によって引き起こされる神経変性疾患群であり、その1つにDRPLA(Dentatorubral-Pallidoluysian Atrophy)が挙げられる。DRPLAは、ATN1遺伝子におけるCAGリピートの異常伸長が原因で発症し、小児では運動失調、てんかん、知的機能の低下などが見られ、成人では運動失調に加えて認知症などが進行する。既存の治療法として、アンチセンス核酸(ASO)を用いた開発が進められているが、ASOは中枢神経系への送達や効果の持続性が不十分であることや、長期間の中枢神経系への投与が必要であり、異常遺伝子そのものを修正できないという課題がある。
発明者らは、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により、CAGリピート配列の上流にフレームシフト変異を誘発することで、ストップコドンを生成し、ポリグルタミン異常タンパク質の翻訳を抑制させることに成功した。ヒト変異ATN1遺伝子が導入されたDRPLAモデルマウスを用いた実験では、100%編集個体で完全な発症抑制が確認され、モザイク編集(12.5%〜92.8%)個体においても、編集率に応じた改善効果が見られた。また、発症後にAAVを利用してゲノム編集コンストラクトを投与することで、病態進行を抑えることができ、最も重篤な症状であるてんかん発作をほぼ完全に抑制する効果が得られ、発症後治療としても有効性が確認された。

Data

  • ゲノム編集による生存期間の延長:DRPLAモデルにおける受精卵ゲノム編集マウスにおいて、モザイク編集群(12.5%〜92.8%)で、編集率が高まるにつれて延命効果が増強し、生存日数の延長が確認され、100%編集群では野生型と同等の延命効果が認められた(A)。
  • AAV投与による治療効果:CRISPR/Cas9を搭載したAAV-PHP.eBベクターを静脈内投与したDRPLAモデルマウスでは、寿命が有意に延長し(B)大脳皮質・海馬・淡蒼球・視床でのポリグルタミン凝集体の減少、脳重および運動・認知機能の回復が確認された。さらにてんかん発作の回数も有意に改善した(C)。

Expectations

ゲノム編集医薬の開発企業:本発明のライセンスインによるゲノム編集医薬の臨床開発を共同で進めていただくことに期待しています。
ウイルスベクター・Crispr/Cas9が搭載可能なデリバリー技術の開発企業:新潟大学で開発済みのゲノム編集コンストラクトを企業で開発されたデリバリーシステムに搭載して、開発候補品を樹立し、共同研究で薬効評価、臨床開発に進めたいと考えている。
技術評価や開発のためのゲノム編集コンストラクト、およびDRPLA動物モデルの提供(有償MTA)が可能です

Patents

特許出願中(未公開) 

Researchers

小野寺 理 先生、加藤 泰介 先生(新潟大学)


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