11アミノ酸の新規抗真菌ペプチド:植物ディフェンシン由来の創薬

2025/10/07 10:39 - By Tech Manage

既存薬とは異なる作用機序により、幅広い真菌種への有効性が期待される

Advantages

  • 新規作用機序による薬剤耐性(AMR)リスクへの新たなアプローチ: 真菌にアポトーシスを誘導し、既存薬とは異なる作用機序で耐性菌の出現を抑制でき、既存薬との併用で相乗効果も期待できる。
  • 幅広い真菌種への有効性: カンジダ属や出芽酵母といった系統的に離れた真菌種に対しても効果が確認されており、多様な真菌感染症への応用が期待される。
  • 高い生産効率と低コスト化: 既存のディフェンシン系ペプチドと比較してアミノ酸数が少ないため、化学合成が容易で生産効率が高く、製造コストの点で有利である。

Background and Technology

現在、真菌症、特に水虫などの表在性真菌症は多くの人が罹患しており、患者のQOLに大きな影響を与えている。既存の抗真菌薬は、主に真菌の細胞膜成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで効果を発揮するが、作用機序の多様性に欠け、耐性菌の出現が深刻な問題となっている。このような課題に対し、植物由来のディフェンシンが新しい作用機序を持つ抗真菌活性を示すことが注目されている。例えば、イネ由来のディフェンシンOsAFP1は、真菌のアポトーシスを強力に誘導することで抗菌作用を示し、従来の薬剤とは異なるアプローチを持つ。しかし、OsAFP1や他の植物ディフェンシン(Pezadeftideなど)はアミノ酸数が多く(OsAFP1は49個 、Pezadeftideは51個 )、生産効率が低いという課題があった。
そこで本発明者は、OsAFP1の抗真菌活性を持つ部分配列を特定し、強力な抗真菌活性を示すアミノ酸数を7〜13に短縮した新規抗真菌ペプチドの生成に成功した。これにより従来の長鎖ペプチドに比べて生産効率を向上させることが可能となった。この短鎖ペプチドは、OsAFP1と同様に真菌のアポトーシスを誘導する作用メカニズムを有しており 、カンジダ属や出芽酵母など広範囲の真菌に対して効果が期待される。さらに、従来のアゾール系の抗真菌薬と併用することで、高い抗真菌効果が得られることも確認されている。この併用効果は、耐性菌発生の抑制にも貢献すると考えられる。本技術は、新しい作用機序と高い生産効率を兼ね備えた次世代の抗真菌薬候補として、期待される。

Data

  • イネ由来ディフェンシンOsAFP1を断片化した短鎖ペプチドは、Candida albicans CAI4株の増殖を32 µMで95%以上抑制した。その修飾ペプチドは16 µMでより高い抗真菌活性を示した (上図)。
  • 従来の抗真菌薬であるフルコナゾールと本短鎖ペプチドを併用した場合、それぞれを単独で使用した場合に比べてCandida albicans CAI4株の生菌数の割合が減少し、抗真菌効果が相乗的に高まることが示された(下図)。



Expectations

ディフェンシン短鎖ペプチドを用いた新規作用機序の抗真菌薬の開発にご興味のある製薬企業やバイオテック企業との共同研究やライセンス契約を希望します。また、農業分野での応用可能性も期待されることから、これらの分野の企業様とのパートナーシップも歓迎いたします。新潟大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示の他、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。本ペプチドの評価試験のための有償のMTA(成果有体物契約)が可能です。

Patents

特許出願中(未公開)

Publication

A. Ochiai. et al., Scientific Reports, 8, 11434, 2018.

Researchers

落合 秋人 准教授 (新潟大学 工学部) ほか


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