がん細胞選択的にアポトーシスを誘導する新規分子標的:C11orf97

2025/07/14 12:43 - By Tech Manage

C11orf97を標的とする分子標的薬・核酸医薬の開発

Advantages

  • がん細胞特異的な抗腫瘍効果:C11orf97は、がん細胞に選択的な細胞死を誘導する抗腫瘍ペプチド・フェリクロームの結合分子として同定されており、がん特異的な分子標的としての有用性が期待される。
  • 低毒性かつ高選択性:フェリクロームは高濃度投与でも毒性を示さず、C11orf97ノックアウトマウスにおいても明確な障害は報告されていないことから、安全性と選択性が高い治療標的として期待される。
  • siRNAによる発現抑制で抗腫瘍効果を確認:in vitroおよびマウスXenograftモデルでC11orf97のノックダウンにより腫瘍縮小効果が得られている。

Background and Technology

フェリクロームは、細菌由来のシデロフォア(金属キレート分子)の一種であり、大腸がん、胃がん、膵がん、食道がんなどのがん細胞に選択的な細胞死を誘導する抗腫瘍ペプチドである。マウスでの予備毒性試験では、薬効量の4倍を2週間反復投与、60倍を単回投与しても毒性は認められず、正常細胞にも影響がないことから、フェリクロームやその標的は毒性の低いがん治療のアプローチであることが示唆された。
その標的分子を明らかにするため、CRISPRライブラリーを用いたスクリーニングを実施した結果、フェリクロームの抗腫瘍活性に影響を与える分子として、機能未知の遺伝子であるC11orf97が同定され、C11orf97タンパク質がフェリクロームと直接結合することも確認された。C11orf97に対するsiRNAによる発現抑制は、複数のがん細胞株において有意な増殖抑制効果を示したが、正常細胞には影響を及ぼさなかった。さらに、マウスXenograftモデルにおいても、C11orf97を標的としたsiRNA投与により明確な抗腫瘍効果が認められた。
以上の結果から、C11orf97はフェリクロームの抗腫瘍活性を媒介する中核分子であり、高い選択性と安全性を備えた新規がん分子標的として、核酸医薬や低分子、PROTACなど多様なモダリティによる創薬展開が期待される。

Data

  • CRISPRスクリーニングCRISPRライブラリーシステムを用いてフェリクロームの抗腫瘍作用に影響を与える標的分子としてC11orf97が同定された。
  • siRNAを用いた抗腫瘍効果:C11orf97に対するsiRNAを投与したマウスXenograftモデルにおいて、腫瘍体積の有意な抑制効果を確認した(下図)。

Expectations

C11orf97を標的とした核酸医薬やPROTACなどの新規モダリティでの創薬に関心を持つ製薬企業やバイオテック企業との共同研究やライセンス契約を希望します。旭川医科大学との密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。

Patents

特許出願中(C11orf97関連:未公開)
特許第6830255号(フェリクローム:成立済み)

Publication

Konishi H, et al. Nat Commun. 2016、Kita A, Int J Oncol. 2020

Researchers

⼩⻄ 弘晃 先生 (旭川医科大学・消化器先端医学講座)


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