AIの判断根拠を解析し、 LVAD装着後右心不全や感染性心内膜炎における個別リスクを可視化。さらに治療レスポンダーを予測することで、最適な治療選択を支援する
Advantages
- 質の高い実臨床データに基づく高精度予測:優良な教師データ(大阪大学・国立循環器病研究センターなど)を基盤とすることで、循環器疾患の予測における高い精度を実現
- 予測結果の「透明性」と「信頼性」: 個々の患者に対し、どの因子がどの程度リスクに寄与しているかを可視化するため、医師は予測の根拠を医学的に評価できる
Application

1. 臨床における治療方針決定の支援
薬剤選択ナビゲーションアプリ:個々の患者データから最適な治療薬候補を予測し、その選択根拠も提示して医師の処方決定を支援する 。
外科手術タイミング最適化ツール:感染性心内膜炎など、手術時期の判断が難しい症例に対し、早期・待機手術それぞれの予後をシミュレーションし、最適な方針決定を支援する 。
LVAD術前介入シミュレーター:LVAD装着手術前に術後RVFリスクを予測し 、さらに術前介入によるリスク変化もシミュレーションすることで術前管理を最適化する(右図)
2. 病院経営・運営の効率化支援
ICU病床管理・予測システム:術後の長期挿管リスクなどを個別に予測し、病院全体のICUベッド需要を算出 。ベッドコントロールなど経営資源の最適化を支援する。
退院支援・在宅医療移行計画ツール:長期入院や合併症リスクの予測に基づき、複雑な退院支援が必要な患者を早期に特定 。円滑な在宅医療への移行やリハビリ計画の立案を支援する。
3. 製薬サイドにおける薬剤レスポンダーの探索支援
処方対象の最適化ツール:レスポンダー予測システムを用いて、既存薬の臨床データを解析することで、当該薬のレスポンダーを予測し、処方対象の最適化や新たな患者層の掘り起こしをする。
薬剤レスポンダー予測アプリ:レスポンダー予測アプリを作成し、医師の当該薬選択をサポートする。
Background and Technology
現代の医療では個別化医療の重要性が高まっている一方で、患者の多様な病態や治療反応により、最適な治療方針の決定が困難なケースが増えている。特に重症心不全患者に対する補助人工心臓(LVAD)装着後に発症する右心不全(RVF)や、感染性心内膜炎(IE)術後の予後予測は、治療方針を左右する重要な課題でありながら、従来のスコアリング手法では予測精度や根拠の明確性に限界があった。また、AIを活用した予測は有望視されるものの、判断根拠が不透明である「ブラックボックス問題」も指摘されてきた。
本プログラムは、これらの課題を解決するために開発された循環器疾患向けAI診断予測ツールであり、大阪大学や国立循環器病研究センターから提供された長年にわたる高品質な実臨床データを学習に用いている。その結果、LVAD後のRVFやIE術後の院内死亡・長期挿管といった重大事象に対し、従来の予測法を凌駕する高い予測精度を実現した。
さらに本システムは、SHAP値(SHapley Additive exPlanations)により、AIの予測に寄与した因子を可視化し、医師が予測の根拠を理解できる設計となっている。これにより医師は信頼をもって予測結果を治療判断に活用でき、個別化医療の推進に大きく貢献する。将来的には他の循環器疾患にも応用が期待される。
Data
- LVAD装着後RVF予測モデル: LVAD装着後のRVFの予測において、既存のSTOP-RVF ScoreのAUCが0.65であったのに対し、本AIモデルではAUC 0.89であった。
- 活動期感染性心内膜炎(IE)術後院内死亡予測モデル: IE術後の院内死亡の予測において、本AIモデルではAUC 0.92、全体正答率97%であった。
Expectations
本技術を基にしたプログラム医療機器(SaMD)としての早期社会実装を目指しています。特に、心不全をはじめとする循環器領域、あるいは術後管理AIの分野で強みを持つ国内外の医療機器メーカー、AI開発企業との連携を強く希望します。共同研究やライセンス契約など、企業のニーズに応じた柔軟な連携形態を想定しており、連携にあたり大阪大学からは以下の提供が可能である。
- 完成済みのAIプロトタイプ(LVAD予測):これを基にした迅速な製品開発が可能。
- 構築済みの教師データ:本モデルの基盤となる独自の臨床データ
- 専門的知見:発明者である医師らとの面談を通じ、医学的な観点からの継続的な助言や議論の機会。
本技術の持つ可能性と事業性にご関心をお持ちいただけた企業は、ぜひ一度、発明者との面談(WEB会議等)を含めた詳細な協議の機会を設けたいと思っております。
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
佐村 高明 先生、宮川 繁 先生(大阪大学大学院 医学系研究科)
以下のフォームからお問い合わせください