大動脈弁狭窄症の早期発見アプリケーション

2025/09/22 13:10 - By Tech Manage

人間ドックなどで撮影された既存の体部CT画像から、大動脈弁の石灰化(アガットストンスコア)を定量化することで、見過ごされてきた無症状のAS患者をスクリーニングする

Advantages

  • 一般的な体部CT画像から計測したアガストンスコアが心臓CTと同等の評価精度をもつことを確認
  • 人間ドックや他疾患でのCT画像検査データを活用するによりAS患者の早期発見につながる

Background and Technology

大動脈弁狭窄症(AS)は、大動脈弁の狭窄により全身への血流が阻害される疾患で、主な原因は加齢に伴う弁の石灰化である。無症状のまま進行することが多いが、症状が現れると予後が悪いことが知られている。近年、無症候性の重症ASに対する早期外科的治療の有効性が示され、早期発見と診断技術の向上が求められている。しかし、確立された早期診断法はなく、重症度評価に用いられる心エコー検査も症状が現れてから実施されることがほとんどである。また、大動脈弁の石灰化の程度を評価するためにアガストンスコア(cardiac CT AVAS)が用いられるが、これは心電図同期付きの心臓CTが必要であり、スクリーニングには適さない。
そこで本発明者は、より一般的な体部CTからアガストンスコア(body CT AVAS)を算出する方法に注目し、ディープラーニングを用いたAIにより、スコアを自動で定量評価するアプリケーションを開発した。このアプリにより算出されたbody CT AVAS は、従来のcardiac CT AVASと高い一致性を示し、心臓CTの代替手段としての有用であることを確認した。この成果は、人間ドックや他疾患の検査におけるCT画像データを活用して、AS患者における石灰化の評価が可能であることを示唆している。これにより、ASの評価を目的としていないCT検査からでも無症候性重症ASを包括的に検出することが可能になり、早期治療介入の機会拡大による医療コストの削減も期待される。

Data

  • 体部CTデータ264例(訓練データ165例、テスト99例)に対して、前処理としてデータから胸部のデータのセグメンテーションを行った後に、本手法を用いて解析を行った。
  • AIによる自動定量値と、専門家が手動で定量した正解値との一致度を評価した結果、アガットストンスコア(AVAS)においてICC = 0.841と、良好な一致が確認された 。同様に、カルシウム体積(AVCV)でICC=0.835 、カルシウム質量(AVCM)でICC=0.835 と高い一致を示した。

Current Stage & Future Research Plans

  • 現段階:体部CTデータからカルシウム量の定量、アガストンスコア算出を行い、冠動脈CTカルシウムスキャンの結果と高い一致率を得た。
  • 次段階:開発者はこの心電図を使用しない通常のCT由来のAVASが心臓CTを用いたAVASと高い一致性を示し、通常のCTのAVASは心臓CTのAVASの代用として使用可能あるいは重症AS発見の門戸になりうることを明らかにした1。この事実をより一般的に適応するために今回開発したAIを利用して一般診療で撮影されるCTに適応し、自動的にAVASの定量化することで画像診断の側面から重症ASの患者をスクリーニングする研究を実施する予定である。

Expectations

名古屋市立大学では、本発明をもとに画像診断ソフトウェアの開発を一緒に進めていただける企業様を探しています。名古屋市立大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。

Patents

特許出願中(未公開)

Publication

Kisohara M,et al. Quantitative feasibility of aortic-valve agatston score derived from 5 mm-thick non-electrocardiography-gated noncontrast body computed tomography for evaluating severe aortic stenosis. Journal of Cardiovascular Computed Tomography 

doi: 10.1016/j.jcct.2025.03.008

Researchers

木曽原 昌也 助教 (名古屋市立大学大学院 医学研究科 放射線医学分野)

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