既存の予測アルゴリズムでは予測困難であったエピトープやHLA間の違いを提示しワクチン候補ペプチドの開発精度の向上が期待される
Advantages
- IC50測定では困難であった「弱い結合」や「疎水性ペプチド」の結合評価を可能にする。
- 低コスト・高効率測定: 合成ペプチドを使用せず、従来法の1/5〜1/10のコストで測定可能。
- MHCIIのエピトープ予測アルゴリズムの学習データとしての活用も期待できる。
Background and Technology
感染症や腫瘍免疫において、MHCIIのペプチド提示能は免疫応答を決定する重要な因子であり、ワクチン設計の基盤となる。特に個別化mRNAがんワクチンの開発では、腫瘍組織のゲノム解析を通じてネオ抗原を特定し、免疫応答を誘導するエピトープ候補を選定するプロセスが重要である。
実際に、腎細胞がん患者を対象とした個別化がんワクチンの臨床試験結果(Braun et al., Nature 2025)では、ワクチン投与後に誘導されたT細胞の大半がCD4+ T細胞であり、MHCクラスIIにおけるエピトープ予測の重要性が示唆されている。しかし、現行のエピトープ予測ツール(NetMHCIIpanなど)には予測精度の限界があり、実測データによる補完が求められている。
従来のMHCII-ペプチド結合測定法は、競合アッセイを用いたIC50値の算出が一般的であるが、以下のような課題があった。
- 難溶性・疎水性ペプチドの測定が困難
- 低親和性ペプチドの評価が難しい
- HLA型間の比較が容易ではない
- 研究施設間での再現性や定量性が低い
本技術では、MHCII-ペプチド複合体の結合強度を評価する培養細胞を用いた新規測定系を開発し、従来の予測アルゴリズムでは困難であったエピトープの免疫原性評価やHLA型ごとの免疫原性の違いを解析できることを明らかにした。現行の予測アルゴリズムが不得手とするがんのネオ抗原やウイルス抗原変異の影響を評価できることが期待される。
Data
- MHCII-ペプチド結合強度とエピトープ分布、および従来の予測アルゴリズムと本技術の性能比較:従来のエピトープ予測手法では、強結合とされる範囲が狭く(上位約5%)、その範囲外での予測精度が十分ではないという課題がある。本技術は、特に強結合とされる範囲外のエピトープの評価を可能にした。
- また、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPと外来抗原を用いた測定データを解析した結果、NetMHCIIpanでは予測が難しかったHLA型間の抗原ペプチドに対する免疫反応の差異を明らかにした。

Expectations
ワクチンの開発企業:個別化がんワクチンの開発や感染症ワクチンの設計などのテーマを特定した共同研究によって、生体における免疫原性予測強化に繋がるかどうかについての実証を試みたいと考えています。取得済みの臨床試験データを基に、HLA型の違いによる効果検証などの後ろ向き解析を共同で進めることも可能です。
ワクチン開発CRO/CDMO:ワクチン開発における独自のMHC結合予測アルゴリズムとして筑波大で取得したデータと本発明のライセンスを提案します。
情報開発企業:実測データを蓄積するための測定系自動化およびMHC結合予測を高精度で行う情報サービスの開発についての協業を希望します。
Patents
特許出願中
Researchers
宮寺 浩子 先生 (筑波大学・医学医療系)
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