バイオフィルム制御型の薬剤感受性促進剤

2025/03/18 16:22 - By Tech Manage

酸化還元分子を用いた電子伝達系の調節による抗生物質効果の向上

Advantages

  • 特定の抗菌薬に依存しない高い汎用性: カナマイシンやゲンタマイシンなど、複数の抗生物質で効果が確認されており、幅広い応用が可能。
  • メカニズムに基づく新規製剤の開発可能性: 試薬であるサフラニンを用いた実験で効果が確認されており、確立された評価系を活用して他の候補化合物のスクリーニングも実施可能
  • 広範な細菌への適用可能性: シュワネラ菌(モデル菌)および緑膿菌(病原菌)において効果が実証されており、多様な細菌種への適用が期待される。

Background and Technology

バイオフィルムは、細菌が形成する多糖マトリックスにより抗生物質の浸透を阻害し、殺菌効果を低下させる。従来の抗生物質治療では、バイオフィルムを完全に除去することが困難である。バイオフィルムの制御手法として、D-アミノ酸やナノ粒子を用いた形成阻害・分散技術、金属イオンによる疎水性変化を利用した手法などが提案されている。しかし、これらの手法は菌種による適用制限があり、汎用性に欠けるため、広範なバイオフィルム制御には十分な効果を発揮できていない。
本技術は、酸化還元分子(例:サフラニン)を利用してバイオフィルム内の電子伝達を活性化し、細菌の代謝を促進することで抗生物質の感受性を向上させる新規アプローチである。
主なメカニズム
  • 電子伝達の促進:サフラニンなどの酸化還元分子が電子を供給し、細菌のNADH/NAD⁺バランスを変化させ、代謝を活性化する。
  • 薬剤感受性の増強:休眠状態にある細菌を活性化し、抗生物質の浸透性を向上させる。
本技術は、抗生物質との併用によるバイオフィルム制御による感染症治療や衛生管理製品への応用が期待される。

Data

  • サフラニンを添加した培地上でバイオフィルムを形成させたShewanella oneidensisを24時間培養し各濃度の抗生物質(カナマイシン)を含む培地でさらに24時間培養した後に、プレートに播種してCFUを測定した結果、10µMのサフラニンを添加した菌のカナマイシン感受性が向上した。
  • 電子伝達パス(OmcA含むシトクロム)の欠損株においては、同様の試験系におけるサフラニンの添加による効果は認められなかったことから、抗生物質感受性がサフラニンの毒性などではなく電子伝達の促進が関与していることが示唆された。

Expectations

本技術のさらなるメカニズム解明および製剤開発を目指し、製薬企業や日用品・衛生管理製品の開発企業との共同研究を求めています。筑波大学・得納研究室では、本技術の実用化に向けた以下の評価系を有しております。

  • バイオフィルム内のNADH/NAD⁺比の可視化システム
  • コロニー内における電子伝達の評価系
  • バイオフィルムモデル菌 (Shewanella oneidensis) による評価

Patents

特許出願中(未公開)

Researchers

徳納 吉秀 先生 (筑波大学・生命環境系)


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