既存の上市薬に比べて特異性が高く多量の摂取が不要な高分子ナノ粒子
Advantages
- 少量の服⽤でインドールを選択的に素早く吸着し服⽤しやすい
- 慢性腎臓病に関するアンメットニーズの高い動物薬としての開発も有望である
Background and Technology
慢性腎臓病は腎機能が低下し、進行すると慢性腎不全となり、最終的には透析が必要になる。慢性腎不全の原因は、腸内で生成・吸収されたインドールが肝臓でインドキシル硫酸に変換され、排出されずに腎臓に蓄積することである。人工透析の導入を遅延させるためには、腸管からのインドール吸収を阻害することが有効であり、そのために球形吸着炭(クレメジン)が使用されている。しかし、クレメジンは疎水性物質を非特異的に吸着するため、食後1時間以上経ってから服用する必要がある。また、一日に6グラムという大量の服用が必要で、服用しにくい上に、腹部不快感や便秘などの副作用があることが問題である。
発明者らは、基材となるN-Isopropylacrylamide(NIPAm)に疎水性モノマーや電荷モノマーの組成を調整し重合することで、消化管内で標的分子であるインドールを特異的に吸着できる高分子ナノ粒子(NPs)を開発した。N-tert-Butylacrylamide(TBA)や2,3,4,5,6-Pentafluorophenyl acrylamide(5FPAA)などの疎水性ポリマーの比率を高めることでインドール吸着量が向上し、クレメジンに比べても迅速な吸着性能を示した。マウスにおいて作成した高分子ナノ粒子5mgを経口投与したところ生体内へのインドール吸収が抑制されていることを見出した。また、生体内各臓器への蓄積がほとんど見られず、ほとんどが糞便中にインドールとともに排出されたことから低毒性であることが期待される。現在、腎障害マウスを用いた試験にて薬効評価を継続中である。
Data
- 10秒振とう後のインドール吸着率はクレメジンで約5%であったのに対して、作成したNPsは40%を超える吸着率を示した。
- 電荷の異なるナノ粒子(電荷なし:TF-NP5、正電荷:TF-NP5p、負電荷:TF-NP5n)を放射性標識したインドールとともに経口投与(5㎎/mouse)し6時間後の各臓器へのインドール由来物質の吸収を測定したところ、血漿、肝臓、腎臓において対照(Vehicle)群に比べて有意に低く、腎臓における蓄積は投与量の1%以下であった。
Expectations
腎疾患領域の医薬品開発に関心のある製薬企業および動物薬企業との共同開発を希望します。特許およびノウハウのライセンスアウトに向けた評価のための、高分子ナノ粒子(NPs)のマテリアル供与(有償)や共同研究も可能です。秘密保持契約下で腎障害マウスを用いた試験結果に関するデータの開示が可能です。
さらに、特定の分子を吸着するナノ粒子の開発をテーマに、目的分子を設定した上での共同研究も提案いたします。ターゲットとなる分子やアイデアをお持ちの企業とのディスカッションも歓迎します。
Patents
特願2017-73019
Researchers
小出 裕之 先生 (静岡県立大学・薬学部)
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