ウイルス増殖時の一過性の核酸要求性に対して細胞の核酸プールを枯渇させる新しいコンセプト
Advantages
- 多様なウイルスに適用可能:特定のウイルスに限定されず、新興・再興ウイルスを含む広範なウイルス種に対応可能である
- 強力な阻害活性:低濃度で強力な阻害活性を示し、副作用リスクが低いことが期待される
- 薬剤耐性リスク低減:宿主の代謝酵素を標的とするため、薬剤耐性のリスクが低い
Background and Technology
新興・再興を含む多様なウイルス種に対する備えを目的とした抗ウイルス薬の開発が求められている。ウイルス感染症のパンデミックを阻止するためには、早期治療によって感染の拡大を抑止することが対策の一つである。新興ウイルス感染症の早期治療を実現するためには、ウイルス種に特有の代謝酵素などを標的とする従来の方法ではなく、ウイルスの増殖や感染に共通して関与する生体分子や現象を作用標的とした創薬が重要である。
発明者らは、ヒトの代謝酵素であるDHODH(ジヒドロオロト酸脱水素酵素)を標的とする抗ウイルス薬として低分子化合物を開発した。DHODHは、DNAやRNAを構成するピリミジン系核酸類のデノボ生合成に関与している。DHODH阻害によって細胞内の核酸プールを枯渇させることで、核酸要求性の高いウイルス増殖が抑制される。また、サイトカインストームの原因となる過剰な免疫反応を抑制する効果も期待される。
H-006は、既存のDHODH阻害薬よりも低濃度で強力な阻害活性を示し、がん細胞系に対しても増殖抑制活性を発揮し、SARS-CoV-2やエムポックスウイルス(MPXV)、デングウイルス(DENV)を含む各種ウイルスに対して増殖抑制効果が確認された。さらに、H-006を基にした誘導体の開発により、溶解性などの物性調整が可能となり、一部の誘導体はプロドラッグ様の活性も示した。現在、感染動物モデルを用いた試験を実施中である。
Data
- H-006とH-006誘導体の構造(A)
- DHODHと SARS-CoV-2に対する酵素阻害および抗ウイルス活性(B)。MPXVやDENVに対してもnMオーダーでのIC50値を示した。
Expectations
本技術の実用化に向けて、臨床試験を実施可能な企業との共同研究を希望します。特に、抗ウイルス薬の開発企業で薬理活性評価や動物試験などの技術を持つ企業との協業に期待しています。また、ウイルス感染症が関わる様々な疾患領域での共同研究も検討可能です。本技術の初期評価のための化合物の提供(有償)も可能です。
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
渡邉 正悟 先生、長田 裕之 先生、渡辺 賢二先生 (静岡県立大学・薬学部)、国立感染症研究所、理化学研究所
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