前立腺がんのDNA修復機構を標的とした放射線増感剤

2025/06/25 14:07 - By Tech Manage

Artemisに結合するアゾール系化合物によって放射線治療効果を高める

Advantages

  • 既存の抗真菌剤を放射線増感剤としてのリポジショニングが可能
  • 放射線耐性を示す他のがん種にも応用可能である

Background and Technology

放射線治療は限局性前立腺癌の標準治療法である。しかし、中リスクの患者の15%以上、高リスク以上の患者では約半数が治療後に再発すると言われており、放射線増感剤の開発が求められている。
発明者らは、前立腺癌の放射線感受性を制御する分子機構に着目して、CRISPRスクリーニングによる放射線感受性遺伝子の探索を行った。その結果DCLRE1C(Artemis)が放射線耐性を与える重要な遺伝子であることが判明した。 Artemisは、非相同末端結合(NHEJ)経路を構成する分子の一つであり、放射線照射によって生じたDNA二本鎖切断(DSB)の修復に関与している。Artemisを欠損させた前立腺がん細胞株は、放射線照射によるDNA損傷が増強され、放射線感受性が高まった。
AIツールを用いた化合物スクリーニングの結果、Artemisに特異的に結合する化合物としてミコナゾールが同定された。ミコナゾールによって前立腺がん細胞株の放射線感受性が増強されることが確かめられた。 ミコナゾールは抗真菌剤として既に使用されており、放射線増感剤としての再利用が期待される。これにより、前立腺癌の放射線照射後の再発を減らし、医療費の削減にも貢献できる可能性がある。

Data

  • ミコナゾール(10-20µM)添加によりDU145細胞、LNCaP細胞および22RV1細胞の放射線感受性が増強された。タンパク質レベルでArtemisの発現低下が確認された
  • ミコナゾール(MICO)投与による放射線治療(RT)の効果増強:DMSO投与群、ミコナゾール単独投与群(MICO)、放射線単独治療群(DMSO+RT)、およびミコナゾール併用放射線治療群(MICO+RT)の4群において、腫瘍体積の推移および生存率を評価した結果、ミコナゾール併用群では、RT単独と比較して有意な腫瘍抑制および生存率の改善が認められた。

Expectations

1.アゾール系化合物の開発企業との放射線増感剤の共同開発
放射線治療の効果を高めるため、アゾール系化合物を基盤とした放射線増感剤の共同開発を提案します。貴社が持つ化学合成および薬剤開発の技術と、大学側の放射線治療分野における知見を組み合わせ、新規治療法の実用化を目指します。

2. 薬剤提供による大学での薬効評価
貴社で開発された薬剤を大学に提供いただくことで、大学側で放射線治療との併用効果や薬効評価を実施することが可能です。これにより、開発中の薬剤の有効性を迅速かつ効率的に検証できます。

3. 放射感受性を高めるArtemis標的薬剤のスクリーニングおよび共同開発
大学側での基礎研究を活用し、新規のArtemis標的薬剤のスクリーニングと共同開発を提案します。

Patents

特許出願中(未公開)


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage