声門上器具を使用した全身麻酔中に生じる換気困難イベントをリアルタイムに予測する
Advantages
- 術中にモニタリングされる一般的な生体情報の時系列データから換気困難イベントを発生の1分以上前に予測できる。
- 約460例の患者データから機械学習。
- 小児患者の声門上器具を使用した全身麻酔時の臨床ニーズを解消する。
Background and Technology
声門上器具(supraglottic airway device: SGA)は全身麻酔中に用いられる気道確保器具の 1 つである。気管挿管に比べて侵襲性が低く、主に四肢や体表の小手術で用いられる。SGAを用いた全身麻酔では、麻酔が不十分であった場合などに気道の刺激応答で生じる喉頭痙攣が発生すると換気困難となり、低酸素血症(SpO2<90%)や心停止に至ることがある。喉頭痙攣は小児で起こりやすく(成人の10倍)、不十分な麻酔による術中の痛み刺激に対しても生じやすい。低酸素血症を予測、検知する技術も開発されているものの、低酸素血症が発症してからでは時間的な猶予が少ないため、低酸素血症の前段階である換気困難の予防法の確立が望まれている。
本発明者らはバイタルサインや気道コンプライアンスの変化から換気困難の発生を予測できるのではと考え、患者の生体情報の時系列データから換気困難発生を予測する機械学習モデルを開発した。データは一般的にモニタリングされる交感神経系の変化や換気と関連する臨床的に重要な変数を入力特徴量としたモデルで、記録済みのデータを学習用データに用いた。換気困難の定義は難しいため、手術の進行状況、投薬記録、時系列データを実際に麻酔科専門医2名がレビューを行って換気困難の判定を行い、約460例の患者データから機械学習モデルの学習を行い、約120例の患者データで検証を行った。その結果、換気困難イベント全体を発生時刻の5分前から1分前までの間に約 60%の感度で予測でき偽陽性も大幅に抑えられるAIの開発に成功した。
Data
- 過去に記録された患者の生体モニタの時系列データセットを用いて、予測モデルの性能を確認したところ、経験豊富な麻酔科医が重要と考える変数(心拍数、収縮期血圧、呼気終末二酸化炭素分圧、最大吸気圧、一回換気量、分時換気量)を特徴量として用いたモデルでは,真陽性(換気困難の5分前から1分前までに異常検知)は 57%であり,偽陽性(真陽性以外に異常検知) は 0.65 回/hであった。
Publication
中西俊之他、2024年度人工知能学会全国大会(第38回)
Expectations
麻酔科系の機器・モニタリング装置を取り扱っている企業様とプログラム開発から一緒に開発したいと考えています。具体的には術中モニタリングシステムにおいて、声門上器具装着時のモニタリングモードで使用されることを想定しています。先生との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたらご相談ください。
Patents
特許出願中
Researchers
中西 俊之 助教 (名古屋市立大学 医学研究科 麻酔科学) ほか
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