ポリグルタミン病に対するsiRNA医薬

2024/09/29 17:07 - By Tech Manage

人工核酸を含むsiRNAが異常延長CAGリピートを含むmRNAを選択的に抑制する

Advantages

  • 人工核酸導入によりsiRNAの中枢神経系への直接投与を可能とし、組織内分布・薬理効果が向上する

Background and Technology

ポリグルタミン病は遺伝子のCAGリピート延長に起因する神経難病の総称であり、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、ハンチントン病、脊髄小脳変性症などが含まれる。SBMAでは、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子のCAGリピートが伸長し、異常なAR蛋白が蓄積し、筋力低下や嚥下機能障害が引き起こされる。CAGリピートを標的とした核酸医薬はポリグルタミン病全体に適応できることが期待される。しかし、正常なCAGリピートを有する遺伝子は中枢神経系で様々な役割を担っているため、正常タンパク質を同時に阻害してしまう懸念がある。
発明者らはCAG リピートを標的としたsiRNA配列の特定部位に非環状核酸(UNA: unlocked nucleic acid)を導入したsiRNAが異常ポリグルタミン蛋白質を選択的に発現抑制できることを確認している。しかし、生体投与の際にはドラッグデリバリーシステムとして脂質ナノ粒子に内包させる必要があるという課題があった。
そこで今回、特殊な人工核酸を用いてCAGを標的としたsiRNAを開発し、このsiRNAを正常及びSBMA患者由来の線維芽細胞に作用させたところ、正常アレルには作用せず、異常ポリグルタミン蛋白質を選択的に発現抑制することを見出した。また、SBMAモデルマウスを用いて脳室内にsiRNAを直接投与したところ、脳脊髄における変異型ARのノックダウン効果や、運動機能の改善効果が認められた。

Data

  • siRNAを正常線維芽細胞(AR-18Q)、SBMA患者線維芽細胞(AR-54Q)に作用させたところ、異常ポリグルタミン蛋白質を選択的に発現抑制した。
  • SBMAモデルマウス(AR-97Q)にsiRNAを投与したところ、投与7日後の脊髄組織において変異ARのノックダウンが確認され(A,C)、また生理食塩水を投与した対照群に比べ運動機能の改善が認められた(D)。一方、siRNAは正常AR(AR-24Q)を有するマウスにおいてはAR発現量に影響しなかった(B)。

Expectations

本発明に関するライセンスを受けて特殊な人工核酸を利用したCAGリピート病に対する核酸医薬を共同開発していただける企業とのパートナリングを希望します。核酸の持続期間をさらに延長させるような技術を有している核酸医薬の開発企業との共同研究や、ハンチントン病・脊髄小脳変性症などのCAGリピート病への適用拡大を目指した共同研究にも関心があります。

Patents

特許出願中(未公開)


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