カンジダ菌にとって致死性の高いエルゴステロール合成経路の新規標的分子
Advantages
- Candida菌遺伝子の中でも欠損時の致死性が高い遺伝子を標的としており耐性菌の出現がしにくいことが期待される
- アゾール系や既存の抗真菌薬とは違う作用点
- 既知の阻害剤で薬効が確かめられており、誘導体展開やスクリーニングが可能
Background and Technology
抗真菌症薬の種類はエルゴステロールの合成酵素阻害を作用点とするアゾール系の他、エルゴステロールに直接作用するポリエン系、細胞壁合成酵素を阻害するエキノキャンディン系、核酸合成阻害作用のあるフルオロピリミジン系と少ない。いずれの系統の薬剤にも耐性菌の出現が問題となっており、抗真菌薬の新しい作用メカニズムが求められている。
発明者らは、エルゴステロール合成経路に関与する酵素遺伝子であるERG25が真菌のコレステロール取り込みと細胞膜の構造に重要な役割を果たすことを明らかにした(図)。ERG25をノックダウンしたCandida glabrataはステロール輸送タンパク質Aus1pの細胞膜局在を妨げ、感染したマウスの致死率を低下させた。
ERG25がコードするステロール-C4-メチルモノオキシゲナーゼの阻害剤として知られる、1181-0519: N-[(2E)-2-[(4-nitrophenyl) hydrazinylidene]propyl]acetamideの抗真菌活性を評価したところ、Candida auriusを含む複数のCandida種に対してµMオーダーでの抗真菌活性(MIC)を示した。
ERG25をヒト型(hERG25)、カンジダ型(CgERG25)に置き換えたノックイン酵母に対して1181-0519を作用させたところヒト型に置き換えた酵母菌には毒性を示さなかった。ERG25は潜在的に副作用を示すことが少ない標的であることも強く示唆された。
Data
- ERG25の阻害剤である1181-0519はC. albicans、C. glabrata、C. auris、C. parapsilosis、C. kruseiに対して強い阻害活性を示し、最小阻害濃度(MIC)は2μM以下であった(下表)
- 殺菌性の高い標的分子としてCandida glabrataのキラー遺伝子であるERG25が特定された
Expectations
1181-0519を基本化合物とした誘導体展開や、ERG25の阻害剤のスクリーニングなどの共同研究によって新しいクラスの抗真菌薬の開発に関心のある企業とのコラボレーションに期待しております。
Publications
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
知花 博治 先生 (千葉大学・真菌医学研究センター)
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