AIによる腰椎神経痛発生部位の自動可視化技術

2024/06/18 11:27 By Tech Manage

MRI画像をもとにした腰神経のトラクトグラフィをAIによって自動化し、より容易に障害神経を可視化できる

Advantages

  • 拡散テンソル画像による腰神経のトラクトグラフィによって痛みの原因部位を可視化。
  • 経験・時間・コストを要するトラクトグラフィ画像の作成をAIで自動化へ。
  • 画像診断が困難な椎間孔狭窄の痛みの原因部位を特定できることで低侵襲手術が可能に。

Background and Technology

腰痛は3000万人の日本人が患っているという疫学調査があり、国民病ともいえる。現在では詳細なMRI画像検査により8割ほどの腰痛が診断可能となっている。しかし、MRI画像所見上で神経の圧迫がみられてもそこが痛みの原因部位ではない、偽陽性のケースも多い。特に、椎間孔狭窄の症例では偽陽性が40%と非常に高く、正確な画像診断が困難であった。
この問題に対し、発明者らは拡散テンソル画像において、神経線維中の水分子の異方性の指標であるFA値は神経障害で低下し痛みなど臨床症状と相関がみられることを報告し、3次元的に神経線維走行を構築する技術であるトラクトグラフィを用いて腰神経線維を画像化させることで痛みを可視化して診断する手法を開発した。
トラクトグラフィを用いた画像では狭窄部は神経が途絶した像として示される。その画像化の過程では、FAマップ上において手動で神経を同定する必要があり、経験・時間・コストの問題があった。そこで発明者らは、AIの深層学習セグメンテーションによって神経根を同定し、3つのフリーソフトウェアを使ってMRIのDICOMデータからトラクトグラフィを自動作成させる自動診断システムを開発した。これにより、トラクトグラフィ上にFA値で障害神経の部位を自動で表示・特定できるようになり、術者の経験によらず短時間に腰痛部位が可視化、診断することが可能となる。これにより腰痛部位をピンポイントに手術する低侵襲手術が可能となり、患者の負担や医療コストの軽減が期待される。

Data

  • U-Netを用いた深層学習セグメンテーションによる神経根の同定を行ったところ、評価指標であるDice係数が0.77であった。
  • 3つのフリーソフトウェアを使ってDICOMデータから自動でトラクトグラフィ作成させたところ、所要時間は平均191秒であり、手動での所要時間より平均235秒短縮された。

Expectations

  • 本発明のライセンス導入により、ROI設定やファイバートラッキングの自動化・普遍化や、障害神経の可視化の開発を一緒に進められる画像解析システム開発を行っている企業を探しています。
  • 千葉大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示の他、本発明者とのご面談も可能です。一定期間における独占的な評価や、実施許諾の優先交渉権等のオプション設定についてご検討いただくことも可能です。

Publications

Eguchi et.al., Spine Surgery and Related Research 2017; 1(2): 61-71

Patents

特許出願済み(未公開)

Researchers

江口 和 特任教授 (千葉大学大学院医学研究院)


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