種子を肥大化させるターゲット遺伝子

2024/09/11 15:57 - By Tech Manage

ゲノム編集によるカロース分解酵素の発現誘導によって種子の重量が10%以上増加する

Advantages

  • ターゲット遺伝子の特定と展開の容易さ: 種子を大きくする遺伝子が特定されたことで、既存の優良品種への展開が容易になる
  • 広範な適用可能性: 双子葉類と単子葉類の両方で種子の肥大化が確認されており、イネやコムギ、ダイズなどの食用作物全般に適用可能
  • 種子サイズの調整による多様な応用: CDE1遺伝子の発現を抑制することで、種子が小さい園芸作物の作出などが期待される


Background and Technology

人口爆発やエネルギー問題を背景にして、効率的に食糧を生産することが求められている。特に植物の可食部である種子は栄養豊富で、イネやコムギなどの穀物は種子を肥大化させることで可食部の生産効率が向上する。一方、種子を小さくすることによっても、種子の保存スペースを削減する、倒伏リスクを低減する、食感を改良した高付加品種を開発することも可能である。
                発明者らは種子の大きさの制御について研究しており、カロース分解酵素(CDE)を過剰発現すると種子が大きくなることを発見した。花粉や花粉管細胞壁の構成成分であるカロースは、師管の末端(PE: Phloem end)に蓄積しカロースゲートと呼ばれる構造を構成し、ホルモンや栄養が未受精種子へ運ばれるのを防いでいる。受精後、種子の成熟が進むにつれてCDEの働きによりゲートが徐々に破壊され、ホルモンや栄養が種子へ運ばれ成熟していくことが明らかにされた(D)。さらに、CDEを過剰発現させると、カロースゲートの分解が進み、種子への栄養分の移動が増大することで種子が肥大することが明らかになった(E: https://doi.org/10.1101/2023.07.23.550179)。               
双子葉類、単子葉類両方でカロース分解酵素の過剰発現による種子肥大の効果を確認しており、イネ、コムギ、ダイズ等種子を食用とする作物への展開が期待される。また、CDE1遺伝子を欠損すると種子が小さくなることも明らかにしており、 種子の小さい園芸作物の作出にも応用できる。

Data

  • カロース分解酵素を過剰発現させたイネ(CDE1OE; OECDE1/OECDE1)では野生型に比べて16%大きな種子を形成することを確認した(A-C)

Expectations

現在、研究室ではイネのCDE遺伝子プロモーター領域の(遺伝子組み換えに頼らない)ゲノム編集によるCDE遺伝子過剰発現イネの作出を試みており、共同で開発していただける企業様を探しています。また、ダイズ、トウモロコシ、ソルガムなどターゲットとする植物種を設定した共同研究によって、種子の大きさの制御に取り組みたいと考えております。これ以外にも、企業様が取り組んでいる、作物種における種子の大きさの制御についての取り組みを検討することも可能です。

Patents

特許出願済み(未公開) 

Researchers

笠原 竜四郎 先生(名古屋大学 生物機能開発利用研究センター)


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