少量の培地でも細胞を傷つけずに培地交換が可能でコンタミリスクも低い形状
Advantages
- インサートに触れずに培地交換が可能で培地交換操作の容易化およびスピードアップが見込める。
- ウェルプレート底面まで容易にチップ先端が届き、少量の培地でも傾ける必要がない。
- インサートに触れずに培地交換が可能なため、細胞に与える剪断力が軽減し、培養の安定化、弱付着性細胞の培養化を可能にするだけでなく、卵子など培養細胞がウェル中で失われることを防ぐ。
- 手順の簡易化、迅速化に伴うコンタミネーションの抑止
Background and Technology
カルチャーインサートを用いた細胞培養における培地交換の際は、カルチャーインサートをウェルプレートに設置したまま行う必要がある。しかし、従来のカルチャーインサートは、培養液の交換操作を考慮した形状になっておらず、ウェルプレートとカルチャーインサート、またはカルチャーインサート同士の間にピペッターが入る十分な隙間がないものが多い。そのため、カルチャーインサートを傾け、その側面のスリット部分からピペッターを入れて慎重に吸い出す必要がある(写真)。また培地が少量の場合には、プレートごと傾けて培地を抜くこともあるため、チップがインサートに触れてしまうことで、細胞にダメージを与えてしまう恐れがあった。
そこで本発明者は、ピペット用のリセスを設けた新しい形状のカルチャーインサートを開発した。このカルチャーインサートはピペットが垂直に入るリセスがある為、インサートに触れることなく培地交換が可能で、少量の培地の際にも容易にウェルプレート底面までチップ先端が届くため傾ける必要がない。また、プレート全体を傾けずにピペットチップで直接ウェルプレートの底にアクセスできることから、ロボティクス装置による自動化も可能となる。これにより、インキュベータの内部にカルチャープレートを入れたまま、自動で培地交換が可能になり、より正確で再現性のある培地交換が可能となり、かつコンタミネーションを起こす確率も低くなることが期待される。発明者らはロボティクス装置の画像認識による自動化に対応できるように画像認識用のマーキングもつけている。
Data
- ピペットが垂直に入る新形状のチップ用リセス付きのカルチャーインサート
- 培地のスムースな交換を可能にするチップ先端形
- 画像認識による自動培地交換に対応したマーキング付き
Expectations
セルカルチャーインサートを開発している企業様と共同で、本発明の設計に基づくセルカルチャーインサートの開発を希望します。自動培養における課題やニーズに即しているかという観点からのコメント、現状の自動培養のインサートに求められる形状的な要件などの情報があれば、フィードバックをいただけますとありがたいです。今後の研究開発の参考にしたいと考えております。
Patent
特開2022-138908
Researcher
八幡 穣 先生(筑波大学)