細菌由来の膜小胞を用いたプロバイオティクス・抗菌剤

2024/04/16 17:21 By Tech Manage

標的細菌の細胞膜由来の小胞を用いることで特定の腸内細菌の活性化製品やバイオフィルム産生菌に対する抗菌剤の開発が可能になる

Advantages

  • 膜小胞を介して直接菌体にアクセスするため特定細菌に作用させる製品開発が可能
  • バイオフィルムなどの障壁があっても菌体に送達できる可能性が高まる
  • 破裂性溶菌(Explosive cell lysis)による膜小胞の量産化が可能

Background and Technology

細菌は膜小胞(MVs)を細胞外に放出し、細菌間の膜タンパク質の交換や遺伝子水平伝播、シグナル分子を介したコミュニケーションを行っていることが知られている。また、実際に膜小胞を利用してワクチンやゲノム編集で核酸を細胞内に導入するキャリアとして実用化されているものの、膜小胞が作られる仕組みが分かっておらず、膜小胞の「質」をコントロールできないことや収量が多くないことも課題の一つであった。
本発明者らは、グラム陰性細菌が膜小胞を形成する機構を利用して、対象物質を効率よく取り込んだ膜小胞を作製する方法を確立した。これはグラム陰性細菌の細胞中で細胞壁分解酵素であるエンドリシンの発現量が一定以上になると細胞が破裂性溶菌(Explosive cell lysis: ECL)を起こして細胞死を起こし、それにより放出された細胞膜断片が再会合して膜小胞が形成されることを利用した方法であるが、エンドリシンを強制的に発現させることにより、ECLは効果的に誘導されることも明らかにした。さらに、ECLを誘導する際に培地に標的物質を含有させておくことで、標的物質が膜小胞に効率よく内包されることを見出した(下図)。この特性を生かし、特定の腸内細菌をターゲットにして、その菌の増殖を促す物質、またはその菌を死滅させる物質(抗菌剤)を内包することが期待される。また、細菌への取り込みは膜小胞を介したルートとなり、  バイオフィルムなどの障壁があっても菌体に送達できる可能性が高まることが期待される。

Data

  • 蛍光物質であるカルセインを含む培地で培養した緑膿菌にExplosive cell lysisを誘導し、膜小胞形成を誘導したところ、カルセインを含む膜小胞が形成された。
  • ゲンタマイシンのみ(上段)とゲンタマイシンを含むMV(下段)を添加した時の抗菌活性。

Expectations

本技術を用いて、効果の高い抗菌剤や腸内細菌に作用させるプロバイオティクス・サプリメント製品の開発に関心のある企業(化学メーカー、食品開発企業)との共同研究に関心があります。企業様がお持ちの抗菌成分や細菌の活性化成分などを、本技術を用いてMVを作成して効果を検証するような共同開発を想定しております。

Patents

特許出願済み:特開2022-77676

Researchers

豊福 雅典 准教授 (筑波大学 生命環境系)


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