標的細菌の細胞膜由来の小胞を用いることで菌種特異性の高い治療が可能になる
Advantages
- 膜小胞を介して直接菌体にアクセスするため特定細菌に対する特異性を高めた治療が可能
- 細菌特異性を高めることで、意図しない一般細菌の耐性菌化を抑制させることが期待される
- 破裂性溶菌(Explosive cell lysis)による膜小胞の量産化が可能
- バイオフィルムなどの障壁があっても菌体に送達できる可能性が高まる
Background and Technology
細菌は膜小胞(MVs)を細胞外に放出し、細菌間の膜タンパク質の交換や遺伝子水平伝播、シグナル分子を介したコミュニケーションを行っていることが知られている。また、実際に膜小胞を利用してワクチンやゲノム編集で核酸を細胞内に導入するキャリアとして実用化されているものの、膜小胞が作られる仕組みが分かっておらず、膜小胞の「質」をコントロールできないことや収量が多くないことも課題の一つであった。
本発明者らは、グラム陰性細菌が膜小胞を形成する機構を利用して、対象物質を効率よく取り込んだ膜小胞を作製する方法を確立した。これはグラム陰性細菌の細胞中で細胞壁分解酵素であるエンドリシンの発現量が一定以上になると細胞が破裂性溶菌(Explosive cell lysis: ECL)を起こして細胞死を起こし、それにより放出された細胞膜断片が再会合して膜小胞が形成されることを利用した方法であるが、エンドリシンを強制的に発現させることにより、ECLは効果的に誘導されることも明らかにした。さらに、ECLを誘導する際に培地に標的物質を含有させておくことで、標的物質が膜小胞に効率よく内包されることを見出した(下図)。これにより抗生物質や核酸医薬、遺伝子編集用のコンポーネントを内包させた膜小胞を作ることが可能になり、特定細菌に対する薬剤治療や遺伝子編集治療の開発が期待される。
Data
- ゲンタマイシンのみ(上段)とゲンタマイシンを含むMV(下段)を添加した時の抗菌活性。
Expectations
本技術を用いて、抗生物質の高活性化や特異性の高い細菌に対する遺伝子編集技術の開発に関心のある企業(製薬・バイオテック企業)との共同研究に関心があります。企業様がお持ちの抗菌剤や核酸医薬などのペイロードに対して、本技術を用いてMVを作成して効果を検証するような共同開発を想定しております。また、エクソソームなどの膜小胞技術を開発している創薬支援サービスを展開している企業様と、創薬基盤技術として確立するための共同開発にも関心があります。
Patents
特許出願済み:特開2022-77676
Researchers
豊福 雅典 准教授 (筑波大学 生命環境系)
Please click here to see English summary.
以下のフォームからお問い合わせください