植物ステロール高含有トマト

2024/02/13 13:02 - By Tech Manage

トマトのメバロン酸経路の負の調節因子(SIHISE1)をゲノム編集によってノックアウトすることで
植物ステロールが果実に蓄積される

Advantages

  • コレステロールの吸収を阻害する植物ステロールを多く含むトマトの品種開発が可能。
  • 植物ステロールを葉にも多く含有しているため、本技術を応用した葉物野菜の開発も可能。

Background and Technology

植物ステロ-ルは、化学構造がコレステロールに類似しており、ヒトが摂取すると小腸内腔でコレステロ-ルの吸収を阻害して、血中コレステロ-ル低減作用を示す。そのため、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病の予防に期待され、また、大腸癌抑制作用や前立腺肥大抑制作用などについての研究も進んでおり,今後機能性成分としての注目度が高まることが期待される。
植物ステロールはAcetyl-CoAからメバロン酸経路を経て生合成される。HMGR(HMG-CoA reductase)はHMG-CoAからメバロン酸を生成する還元酵素である。シロイヌナズナにおいて、HISE1遺伝子によって負に制御され、HMGRの発現抑制を介して、植物ステロールの過剰生産や過剰蓄積を防いでいることが発明者らによって明らかにされた(https://doi.org/10.1038/s41477-019-0537-2)。HISE1遺伝子は植物種間でよく保存されていることから、トマトにおいて同定したHISE1(SIHISE1)遺伝子をゲノム編集によりノックアウトしたマイクロトム株(Slhise1-1)を作製したところ、植物体に植物ステロールを蓄積する脂肪滴(LD)の数や面積が増え、植物ステロールの中でも特にステロールエステル(SE)の蓄積が、野生型と比較して葉においては100倍以上、果実においては10倍以上増大していることを見出した。
作出したマイクロトム株(Slhise1-1)を交配親として、植物ステロールを多く含む機能性トマトとしての新品種の開発が期待される。また、葉にも多く蓄積されることから、HISE1遺伝子を改変したレタスなどの葉物野菜の新品種の開発にも適用可能な技術である。

Data

  • Slhise1-1株のトマトの葉と果実の植物ステロール量は、野生型と比較して、葉ではステロールエステルとドリコールが100倍以上、果実ではステロールエステルと遊離ステロールが10倍以上含まれていることを確認した。

Expectations

  • マイクロトム株(Slhise1-1)を交配親とした機能性トマトの新品種開発を進めたいと考える企業様との協業を希望しています。
  • レタスなどの葉物野菜やほかの作物へ適用したいと考える企業様との共同研究も歓迎します。期待できます。

Patents

特許出願済み(未公開)

Researchers

島田 貴士 准教授(千葉大学 園芸学研究院/植物分子科学研究センター/宇宙園芸研究センター)

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