土壌還元消毒法のメカニズム解明によって同定された嫌気性細菌の産生物であるカプロン酸が病原菌を殺菌する
Advantages
- 土壌還元消毒法(Anaerobic Soil Disinfestation:ASD)の有効成分を同定。
- 従来のASDよりも時間とコスト削減につながり、気候や季節に関係なく安定的な土壌消毒が可能
- 同定された嫌気性細菌(Clostridium sp. E801)を用いた製品化も可能
Background and Technology
連作による土壌障害の一つとして糸状菌などによる植物病原菌による土壌汚染が知られている。連作障害への対応として、畑の休閑期にクロルピクリンなどの燻蒸剤を用いた土壌消毒が行われていたが、環境や人体への影響が懸念されており、厳しく規制されている。環境負荷の小さい消毒法として、土壌還元消毒法(ASD)が採用されている。ASDは有機物を混和した畑を潅水し、表面をフィルムで覆うことで土壌中の嫌気性細菌が活性化し、土壌が還元されることによって土壌病原菌を死滅させる消毒法である。しかし、ASDの詳細な消毒メカニズムは解明されておらず、高緯度地域など低温条件では効果が不安定なこと、コストが高く作業工程が多いことが問題である。
本発明者は、ASDで優占する嫌気性細菌を分離し、その消毒因子を特定することに成功した。ASDの再現実験によって、ASD後の土壌に特異的な嫌気性細菌であるClostridium sp.の E801株を単離し、E801株が産生するカプロン酸がトマトの連作時に土壌障害の原因菌の一つであるFusarium oxysporum f.sp. lycopersici (Fol)の生育を阻害することを見出した。カプロン酸は、低温下でも安定的に殺菌効果を示し、植物病原細菌の一つである青枯病菌(Ralstonia solanacearum)に対しても効果を示した。また、実際に土壌中にカプロン酸を添加したところ、Folに対して殺菌効果が確認された(下図、30℃)。E801株からカプロン酸を安価に発酵生産させることができれば、土壌に直接散布できる、低温下でも安定・安価・簡単な土壌消毒法になると期待される。
Data
- Folが存在する450ml容積の黒ボク土に10 mMの各脂肪酸(A)各濃度のカプロン酸(B)を添加し30℃(A)又は15℃(B)で静置したところ、カプロン酸の殺菌効果が確認された。
- エタノールと酢酸を出発物質としてE801株に発酵生産させたときのカプロン酸、酪酸の産生量(C)
Development Stages
- 実験室レベルの土壌中でカプロン酸のFolへの効果を確認し、トマトを植栽したポットでも検証中。
- 培地を用いた試験により、カプロン酸のFol及び青枯病細菌への効果を低温下で確認済み。
Expectations
本発明の実用化、製品化に向けて①フィールドにおけるカプロン酸やE801株の効果の実証試験から協力してくださる企業様、②E801株を用いてカプロン酸を生産するシステムの構築を一緒に協働開発していただける発酵・生産技術をお持ちの企業様との連携を希望します。秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示の他、天知先生との面談も可能です。
Patents
特許出願済み(未公開)
Researchers
天知 誠吾 教授 (千葉大学大学院 園芸学研究院)
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