非接触のマイクロ波センサで皮膚状態をモニタリングし褥瘡のステージを早期に検出できる
Advantages
- 一般の寝具にも取り付け可能で在宅での使用も想定される非接触・非侵襲のセンサ
- 褥瘡を早期発見し、早期治療につなげて悪化を防止できる
- 経時的なモニタリングが可能になることで介護者や、医療従事者が定期的に見回りをするなどの負担が軽減される
Background and Technology
褥瘡は、寝たきりなどで皮膚と組織が長時間圧迫されることによって、血液循環が悪化し皮膚の表面に赤みや潰瘍が生じた状態である。入院患者の約2%に発症するといわれており、褥瘡が一度できてしまうと、その治癒や管理のため医療従事者にかかるコストは大きい。また、高齢化社会を迎えて寝たきり高齢者の在宅介護の増加が見込まれる中、褥瘡の予防と早期発見・早期治療は大きな課題である。現在、褥瘡の診断は医療従事者による視診や触診、超音波検査によって行われているが、どちらも専門知識や経験が必要であり、在宅での早期発見は難しい。また、患者の皮膚に直接貼付する診断センサも開発されているが、定期的な交換の必要や皮膚のかぶれなどの問題がある。
発明者らは、ベッドのマットレスの下からマイクロ波(5.8GHz・10GHz)を体に照射し褥瘡のステージを非接触・非侵襲で検出する方法を開発した。作製した褥瘡の各ステージの42種類の皮膚モデル(右上図)に対して患部に当たったマイクロ波の反射時間と大きさを指標とした値を生成し、健康皮膚モデルとの差分から欠損部の深度と表面積(辺の長さ)体積を推定できることを明らかにした。
Data
- 褥瘡のステージ・欠損部の一辺の長さが既知の褥瘡モデルに対して、照射したマイクロ波から得られた波形のウェーブレット変換値を用いて①各ステージにおけるピーク値と欠損部の一辺の長さをプロット(右中図)し②到達時間と計算した欠損部の体積の関係をプロットすることでピーク値と到達時間から褥瘡のステージ、欠損部の1辺の長さと体積を予測できることを示した。
Expectations
- 現段階:豚から採取した皮膚・脂肪とポリアミド樹脂を併用したハイブリッドファントムで褥瘡モデル(右下図)を作成し検証中。10GHzのマイクロ波センサ、Raspberry Piを用いてプロトタイプを組み上げている。
- 次段階:皮膚と装置間距離の変化に対応したフローの検討と、褥瘡になりそうな皮膚やステージIの高感度な検出方法の確立。回路設計やプログラムの工夫によって実機に近い装置をくみ上げていきたい。
- 千葉大学では、5-10Ghzマイクロ波を使ったセンサや測定機器をヘルスケア領域の製品開発に展開したいと考えておられる企業や介護用機器の開発企業と協働して開発を進めたいと希望しています。また、企業様と共同でのグラント応募についても検討可能です。
Patents
特許出願済み(特願2022-103577)、取得済みの特許(特許6890845)
Researchers
高橋 応明 准教授(千葉大学 フロンティア医工学センター)
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