単純性血管腫のレーザー治療用増感剤

2023/09/26 10:28 By Tech Manage

人工赤血球として開発された一酸化炭素結合ヘモグロビンベシクル(CO-HbV)の投与によって既存のレーザー治療の効果を高める

Advantages

  • 人工赤血球は赤血球の1/30の大きさで特徴的な血管内分布を示し、血管の光吸収増加/血管周囲組織の光吸収減少/血管内皮への効率的な伝熱により、血管の太さや深さに依らす赤あざの病的血管に対してレーザー治療による血管障害治療効果を示す。
  • 光分解で遊離した一酸化炭素の強力な抗酸化・抗炎症作用が血管周囲組織の熱損傷の二次進行を阻害する。

Background and Technology

単純性血管腫は皮膚毛細血管の拡張や異常形成を原因とする赤色斑であり、新生児の約0.3%にみられ、レーザー照射療法が主に整容改善の目的で世界的に行われている。この治療は、血管内のヘモグロビンに吸収されたレーザー光が、熱エネルギーに変換されることで血管内皮を壊死させる原理に基づいている。しかし、血管の位置が深い、血管が細い、または太い症例の場合、光熱エネルギーの変換率・伝熱が低下するため、治療抵抗性となる。約10~30%の症例がレーザー治療が奏功しない難治性である。また、治療よって血管だけでなく周囲組織も一部熱損傷を受けてしまうことが原因で、色素沈着や瘢痕形成などの深刻な合併症を起こすことがある。
ヘモグロビンベシクル(HbV)は精製ヘモグロビンをリポソームで内包した血液代替物である。発明者らは血管腫に対するレーザー治療の増感剤としてHbVを適用したところ、血管腫動物モデルにおいて高い効果を実証した。HbVの直径はヒト赤血球の1/30と小さく、血管内で赤血球の間を埋めるように存在し、特に管内壁面付近にHbVが分布することで、治療の効果を高めることがシミュレーション実験で示された。実際に、動物実験では治療抵抗性の原因となる細い血管や太い血管、深い血管をも強く障害した。さらに、HbVの製造過程の中間体である一酸化炭素結合ヘモグロビンベシクル(CO-HbV)用いてレーザー照射をしたところ、HbVと同等に血管損傷を強化しながらも、血管周囲組織の熱損傷は低減させることに成功した。光分解で生成した遊離COの強力な還元作用によって、活性酸素の中和による抗酸化・抗炎症作用が関与することが示唆されている。CO-HbVを増感剤として用いることで、単純性血管腫のレーザー治療がより安全かつ、効果的になることが期待される。

Data

  • HbVを投与したニワトリ肉垂に対するレーザー照射後の組織像。細い血管(左写真)や太い血管(右写真)、深い血管で血管損傷増強と大きな血栓形成が確認された。矢印は血管内上部に広く固着したHbV凝塊を示す。
  • HbVとCO-HbV投与時のレーザー照射後における、血管周囲組織の損傷の比較。CO-HbV投与時には血管周囲組織の浮腫・出血・壊死などの損傷が軽減された(下)。

Expectations

千葉大学では、安全性試験や臨床開発を進めていただける創薬パートナーを募集しております。特に皮膚科領域の開発企業や、慢性炎症疾患の治療薬開発、人工血液の開発に興味ある企業とのコラボレーションに期待しています。

Patents

特願2020-206156 他

Researcher

力久直昭(千葉大学形成外科)


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage