血管の炎症に関連する分子を標的とした新しいコンセプトの治療薬
Advantages
- 血管リモデリングに対する改善効果が期待される
- 臨床病態でも血中Myl9値の上昇が確認されておりコンパニオン診断が可能
Background and Technology
肺高血圧症は、肺血管の血圧が異常に上昇する難病である。治療には血管拡張薬が主流であるが、病態の根本的な要因である血管リモデリングを治療する薬剤はまだ存在しない。
Myosin light chain (Myl) 9は、炎症に伴って血小板から放出され、血管内腔でネット構造(Myl9 nets)を作る。このMyl9 netsを足場として、CD69を発現する炎症性の免疫細胞は血管から組織内へと浸潤する(CD69-Myl9システム)。実際に、Myl9とCD69との結合を阻害する抗Myl9/12抗体は喘息やIBDのモデルマウスに対しての治療効果を有することが確かめられている。
発明者らは、Myl9を含む血栓が肺高血圧症モデルマウスと同様に患者の肺動脈組織に高発現していることを明らかにした。患者血清中のMyl9値は病態の悪化と相関して高値となり、薬剤介入した患者の病態が改善するにつれて、Myl9値が低下する症例が確認された。
肺高血圧症マウスモデルに抗Myl9/12抗体を投与したところ、タダラフィル(PDE5阻害薬)と同等の治療効果が認められた。さらに、抗体投与によってαSMA陽性の異常血管内皮細胞の増殖が抑制された。抗Myl9/12抗体の肺高血圧症に対する治療抗体としての開発可能性が期待される。
Data
- 肺高血圧症マウスモデル及び肺高血圧症患者の肺動脈内の微小血栓におけるMyl9の沈着(A)
- 肺高血圧症マウスモデルに対して抗Myl9/12抗体、コントロール抗体、タダラフィル(PDE5阻害薬)を投与した時の右室収縮期圧と右心室と左心室の重量比(B)とαSMA陽性血管内皮細胞の観察(C)
Current Stage
- Myl9/12ヒト型抗体は樹立済み。
- Pre-clinical以降の臨床開発を進めたい。
Expectations
千葉大学で樹立した抗Myl9/12抗体に基づく肺高血圧症に対する治療抗体の開発を進めていただける製薬企業、バイオテック企業とのパートナリングを希望します。
Patents
- 基本特許:JPA 2022-165838
- 物質特許:US10513561, EP3404040,他
Researchers
岩村千秋 先生、栗山祥子 先生 (千葉大学)
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