高分子の精密かつ迅速な分解速度測定

2023/07/11 14:37 By Tech Manage

水中で分解された対象の高分子マイクロ球体の経時的なサイズ変化を、球体に封入した蛍光色素が発する光の波長変化で検出することで分解速度を精緻に測定できる

Advantages

  • プラスチックなどの合成高分子の水中の分解速度を、夾雑物を含む環境下であっても、電気などを用いずに光学顕微鏡で測定できる。
  • 経時的なサイズ変化を蛍光波長の変化から精緻に検出できるため、例えば重量計測で数日必要な重量変化の傾向を1時間程度の短時間で測定可能。
  • 海洋生分解性プラスチックの分解や、細胞内のタンパク質分解活性、セルロース系エタノール発酵の酵素活性など、ラボスケールでの微生物や酵素、触媒などのスクリーニングに適用可能。

Background and Technology

不溶性高分子固体の加水分解の計測は、海洋プラスチックごみ問題や汚水浄化、バイオマス発酵などの環境問題に関する評価研究や、細胞内のタンパク質代謝、微生物の探索研究などにおいて重要である。
従来の分解速度測定方法である乾燥重量法(分解前後で、対象物をバルクで乾燥させて重量を比較)は最も普及しているが、顕微測定やその場での測定は困難であり精度も劣る。また水晶振動子マイクロバランス法は精度が高く現場での測定も可能だが測定条件が限定的であり夾雑物が存在する環境下では適さない。
本技術は高分子の分解速度を、顕微的で精密に、電気などを用いず光学的にその場で測定できる方法である。具体的には、蛍光色素を含有させた粒径が均一で形状が真球に近い高分子マイクロ球体に、レーザー光(励起光)を照射して、その球体が発する蛍光のスペクトルの光共振ピーク波長を検出する。分解による粒径変化に応じてピーク波長が厳密に変化するため、経時的なサイズ変化が短時間で測定可能となる。
本技術の用途としては、海洋生分解性プラスチックの分解や、細胞内のタンパク質分解活性、セルロース系エタノール発酵の酵素活性など、ラボスケールでの微生物や酵素、触媒などのスクリーニングが想定される。

Data

フィブロインからなるマイクロ球体に分解性のProteinaseK、非分解性のProtease XIVを作用させたときの経時的発光変化による分解測定(左・min)重量計測による分解測定(右・hour)本計測法は分解の初速を精緻に検知することが可能である。

Expectations

環境中での生分解性プラスチックの分解をラボスケールで検討したい企業様、バイオマス発酵やブラスチックの分解に関与する微生物や酵素、触媒などを研究・開発している企業様との共同研究を希望します。進め方の例として①対象となる高分子(プラスチック・タンパク質など)を選定する②筑波大学にて高分子マイクロ球体を作成する③企業様にてマイクロ球体を利用した高分子分解速度測定などに活用することを想定しております。

Patent

特許出願中

Researcher

山岸 洋 (筑波大学 数理物質系 助教)

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