高効率なダイレクトリプログラミング法を用いた軟骨再生医療

2023/08/08 16:55 By Tech Manage

誘導因子として改変SOX9を用いることで軟骨細胞を効率的に誘導することに成功した

Advantages

  • 豊富に存在する線維芽細胞や脂肪由来幹細胞などから時間・培養コストをかけずに多量の軟骨細胞を誘導することが可能
  • リプログラミング因子の導入にセンダイウイルスベクターを用いることで腫瘍化リスクが低減された
  • 生体適合性の基材と組み合わせることで軟骨再生デバイスの開発も可能

Background and Technology

関節の軟骨は血管、神経、リンパ管が存在しないため、新たな細胞が供給されず、再生能力が低い組織である。このため、一度損傷すると自然治癒が難しく、その後の経過により損傷が拡大すると変形性関節症の原因になると言われている。関節軟骨損傷や変形性関節症に対しては、薬物療法や関節置換手術などが行われているが、完全な軟骨再生は難しい。また軟骨再生を目的として、自家軟骨移植として患者自身の正常軟骨を採取、培養したうえで軟骨欠損部に移植する治療も開発されているが、正常軟骨組織を傷つけてしまうという問題がある。
線維芽細胞や脂肪由来幹細胞にKLF4、c-MYC、SOX9を遺伝子導入して移植用の軟骨細胞を誘導するダイレクトリプログラミング法が開発されている。ダイレクトリプログラミング法は脂肪由来幹細胞など誘導元となる細胞が豊富である、iPS細胞からの誘導に比べて時間効率が良いなどの利点があるが、軟骨細胞の誘導効率が低いことが課題であった。発明者らはSOX9の変異体を用いることで、軟骨細胞の誘導効率が向上することを見出した。さらに、遺伝子導入にセンダイウイルスベクターを用いることで宿主遺伝子へのプログラミング因子の挿入リスクを回避するプロトコルを確立した。現在、さらに安全性の高いセンダイウイルスベクターによる軟骨細胞の誘導や、移植用の基材との組合せを検討しながら動物モデルでの実証を進めている。

Data

  • マウス胚性由来線維芽細胞(MEF)にKLF4、c-MYC、SOX9(野生型 or 変異型)をレトロウイルスベクターで導入し、誘導した軟骨細胞と軟骨基質の分泌(A)軟骨関連遺伝子の発現(B)を確認した。

Expectations

細胞医療の開発企業、軟骨再生医薬の開発を進めている企業との共同開発を希望します。再生医療用の生体適合性マトリックスを開発している企業様と共同で、軟骨再生に関する共同研究(in vivo)を実施することにも関心があります。

Patent

特許7265763号

Researchers

福田綾先生(筑波大学・医学医療系)


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