ストレス応答シグナルに関与する遺伝子をゲノム編集によって抑制し、ストレス応答にかけるエネルギーを成長に配分することにより、植物工場のようなストレスフリー環境で高成長する植物を作出する
Advantages
- 植物工場向けの生育が早く収量の高い専用作物品種の作出
- ゲノム編集による特定遺伝子のノックアウトであり安全
- ストレスのある環境では成長できないため自然界への影響リスクが低い
Background and Technology
植物は病害・温度・乾燥・光などの環境ストレスに応答するため、本来は成長に使われるはずのエネルギーの一部を利用する。つまり、植物の成長とストレス応答はトレードオフの関係にある。発明者らはペプチドホルモンPSY(plant peptide containing sulfated tyrosine)の受容体PSYRを3種類同定し、成長とストレス応答との切り替えに関わっていることを発見した。PSYRはPSYが結合すると不活性化(ストレス応答オフ)され、結合していないときに活性化してストレス応答(細胞防御、細胞強化、等)に関連する多数の転写因子群の発現が誘導される。PSYは全身の細胞で発現しているため、通常はストレス応答が抑制されるが、細胞がストレスを受けて機能不全になるとPSYを生産できなくなり、PSYRが活性化してストレス応答が誘導される。
私たちは、PSYRをゲノム編集でノックアウトすると、ストレス応答が抑制されることにより、成長が野生型より促進されることを見出した(Data参照)。PSYRはコケ植物から高等植物まで保存された受容体であり、トマトやレタスでも応用できる。PSYRをノックアウトすると収量があがるが、ストレスに弱くなることが想定されるため、環境管理された植物工場等の専用品種が開発できる。
Data
- PSYRをノックアウトしたシロイヌナズナ変異株(psyr1,2,3)における根の成長(A,B)植物体の成長(C)新鮮重量(D)
Expectations
私たちは本発明の知見を元にレタスやトマトなどの園芸作物で「植物工場専用」品種の開発を目指したいと考えています。ゲノム編集により各品種のPSYR欠損株を作成し、生長促進効果を始めとして、味・栄養素・外見を検証したいと考えており、品種ごとに共同開発していただけるパートナーを求めています。
Publications
Mari Ogawa-Ohnishi et. al.
Peptide ligand-mediated trade-off between plant growth and stress response Science. 2022 ;378(6616):175-180.
doi: 10.1126/science.abq5735.
Patent
特許出願中
Researcher
松林嘉克先生(名古屋大学 大学院理学研究科 細胞間シグナル研究グループ)
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