気孔開口が制御された高収量植物

2024/04/10 11:29 By Tech Manage

ゲノム編集によりプロトンポンプを介した気孔開口を促進し光合成活性や根での栄養吸収が亢進した高収量植物を得る

Advantages

  • この高収量植物は窒素源の施肥量を半量にしても、通常の施肥と同程度の収量が期待される
  • 光合成が促進されることでCO2削減にも貢献する。
  • 気孔開口メカニズムは植物を通じて共通のため、多くの園芸作物やバイオ燃料用植物への適用も可能

Background and Technology

植物の成長と収量を高める方法は、食料危機の解決だけでなく、二酸化炭素の削減や環境汚染の原因となる施肥量の削減に貢献することが期待される。植物において成長と収量を高めるためには光合成活性の向上が必要であり、炭素源である二酸化炭素を植物体内に取り込む気孔の制御が重要である。気孔は青色光の受光をトリガーとしたシグナル伝達により開口することが知られている。
発明者らは、孔辺細胞の細胞膜プロトンポンプが活性化することで過分極が生じ、それに伴って水(H2O)が細胞内に流入することで孔辺細胞が膨潤するという気孔開口メカニズムを明らかにした。発明者らは、細胞膜プロトンポンプを遺伝子組換えで孔辺細胞に高発現させたシロイヌナズナやポプラを作成し栽培したところ、気孔開口が促進され、光合成活性が上昇し、収量の増加に至ることを実証した(https://doi.org/10.1073/pnas.1305438111, https://doi.org/10.3389/fpls.2021.766037)。また、イネの細胞膜プロトンポンプの発現量を全身的に増やすことで、葉では気孔開口が促進され、光合成活性が上昇し、根では栄養素の吸収が高まることで、野外圃場にて収量が増加することも実証した(https://doi.org/10.1038/s41467-021-20964-4)。しかし、この時に作成したのは遺伝子組換え植物であり、実用化にはハードルがあった。そこで、本発明者はシロイヌナズナの細胞膜プロトンポンプAHA2遺伝子のプロモーター領域のゲノム編集によって、遺伝子の発現を増大させるゲノム編集作物の作出を試みた。AHA2遺伝子のプロモーター領域を同定し、任意のサイトを標的としたgRNAを用いて、Crisprによるゲノム編集を試みたところAHA2遺伝子発現が増大したシロイヌナズナ系統を作出することに成功した。細胞膜プロトンポンプによる気孔開口や栄養分吸収メカニズムは植物に共通して存在する機構であり、様々な実用作物において本技術を用いた高収量化が期待される。                

Data

  • シロイヌナズナのプロモーターの保存領域にゲノム編集で変異を入れたところ(9ライン)、3ライン(上図赤線)で葉と根でプロトンポンプ遺伝子AHA2の発現が亢進し、気孔開口・光合成活性・栄養分吸収活性・バイオマスが高まった。
  • 種子収量が35%以上増大した。

Expectations

本技術を利用して、レタス、トマト、イネ、小麦などの作物種、バイオマス植物で高収量品種や系統の作出についての共同開発に関心のある企業様を募集しております。上記作物の品種改良ごとにテーマを設定して共同研究に取組む形を想定しています。

Patents

特許出願中(未公開)

Researchers

木下 俊則 先生 (名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 教授)


Please click here to see English summary.

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage