眼内への抗体医薬の徐放デバイス

2023/11/08 19:52 By Tech Manage

封入した気体が水溶化する過程で薬剤が放出される現象を利用したデバイス

Advantages

  • 3か月以上の長期的な抗体医薬の徐放
  • 一度装着すれば薬剤やガスの再充填も可能

Background and Technology

目はコラーゲンなどのバリア機能の存在により点眼薬や内服薬が眼内に到達しにくい器官である。このため、加齢黄斑変性など網膜、脈絡膜に対する治療は抗VEGF薬など抗体医薬を直接硝子体内に注射することが主流となっている。さらに抗体医薬の薬効維持のために1ヵ月ごとに眼内注射を繰り返す必要があるが、眼内注射は細菌感染による眼内炎などの合併症が懸念され、高齢者の通院や治療の継続が困難な場合も多い。
製剤化の工夫によりVEGF抗体の効力を長期化する開発も進められているが、複数回の眼内注射は避けられず、単回投与量で数ヶ月以上の徐放が可能な埋め込み型デバイスの開発が期待されている。既存技術として、VitrasertやIluvienなど非分解性ポリマーに薬物を貯留させたリザーバー型デバイスやOzurdexなど分解性の高分子に薬物を包含させたモノリシック型デバイスが開発されているが、それぞれ水溶性薬剤の徐放と貯留の両立や長期保持に課題があり、抗体医薬への応用は難しい。
安川先生らは気体の水溶性に応じて抗体医薬が徐々に吸収される現象を利用した、ガス封入中空型の眼内徐放デバイスの開発を行なっている。中空デバイス内に凍結乾燥させた抗体製剤を設置し、眼内に埋植した先端開放部を通してデバイス内の気体が眼内液と置き換わる過程で、デバイス内の抗体製剤が溶出する仕組みである。

Data

  • 3Dプリンターで作製した眼外留置デバイス(左図A)と実際に動物の眼外に留置した様子(左図B)
  • デバイス内にセツキシマブを凍結乾燥し、大気(Air)もしくは6フッ化硫黄(SF6)ガスを充填してウサギの眼に留置した後の前房内の抗体濃度の推移(右図)
  • デバイスに中空チューブを連結することで薬剤用量を増大させることも可能(左図)

Expectations

本発明に基づく眼内徐放デバイスの共同開発を進めていただける企業を求めています。コンセプトやプロトタイプは完成しており、チューブの素材改良などによる薬剤用量の増大や徐放性の改善に取り組みたいと考えております。

Patent

特許第6856948号

Researcher

安川 力 教授(名古屋市立大学・眼科学分野)


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