ノイラミニダーゼ阻害剤による神経再生治療

2024/07/02 15:22 By Tech Manage

傷害された脳組織の微小環境を改善させることで新生ニューロンの傷害部への移動を誘導する

Advantages

  • 薬剤の投与のみで、低侵襲かつ広範囲への再生促進効果が期待できる。
  • ノイラミニダーゼ阻害剤の一つである既存の抗インフルエンザ薬の利用が期待できる。
  • マウスでは、ノイラミニダーゼ阻害剤の投与により、脳傷害によって失われた運動機能が改善。

Background and Technology

脳傷害を根本的に治療するためには、失われたニューロンを再生させて脳機能を回復させる神経再生治療が重要である。神経再生治療として、幹細胞の移植、神経成長因子の投与、内在性の神経幹細胞の誘導などが検討されている。しかし、神経修復されるべき脳傷害部の微小環境については未知の領域であった。
本発明者は、脳室下帯(V-SVZ)に多く存在する神経幹細胞から誘導された新生ニューロンの移動に必要な因子や移動メカニズムの解明を進める中で、正常脳に比較して傷害脳では新生ニューロン同士が接着して移動障害を起こしていることを明らかにした。細胞間接着を負に制御する分子としてNCAM上に付加されているポリアシル酸(PSA)が知られており、PSAはノイラミニダーゼによって切断される(図)。発明者らは傷害脳においてノイラミニダーゼの発現が亢進しており、新生ニューロン同士の細胞間接着が増強されることでニューロンの移動が抑制されていることを見出した。
そこで、発明者は脳傷害を起こしたマウスにノイラミニダーゼ阻害剤である抗インフルエンザ薬(Zanamivir)とN-Acetyl-2,3-didehydro-2-deoxyneuraminic Acid (DANA)を投与したところ、マウス脳内のPSAレベルと新生ニューロンの傷害部への移動が亢進し、運動機能が回復することが確認された。

Data

  • マウスにおいて脳傷害7日後からノイラミニダーゼ阻害剤(DANAおよびZanamivir)を14日間投与し、35日後に組織学的な解析をしたところ、コントロール群に比べ、傷害部の周囲に成熟ニューロンのマーカーであるNeuN+な新生ニューロンが増加していた。
  • 同様の試験系において、コントロール群よりも阻害剤投与群にて左側滑落回数の割合が減少し、運動機能の改善が確認された(図A-C)。

Expectations

本発明の知見を基にした神経再生治療に共同で取り組んでいただける企業様とのパートナリングを期待しております。特に①ノイラミニダーゼ阻害剤またはその誘導体を開発している企業様と共同で本発明の薬効評価と脳梗塞治療薬の共同開発②細胞治療など神経再生をコンセプトにした治療薬を開発している企業との共同研究などに期待しております。

Patents

PCT/JP2023/032912

Researchers

澤本 和延 先生(名古屋市立大学 医学研究科)


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