肝細胞から胆管細胞がんへの分化転換因子に関連するNIKを標的とする分子標的薬
Advantages
- 初めて明らかにされた胆管細胞がんの起源と腫瘍への分化転換メカニズムに基づく分子標的治療
- 悪性度が高いTraf3 low/NIK high型の胆管がんに対してバイオマーカーと組み合わせた治療開発も可能
Background and Technology
胆管細胞がんは、原発性肝がんの約15%を占めているものの、進行してから見つかることが多く、予後不良である。
胆管がんの治療薬で承認されているものは殺細胞性の抗がん剤のみであり、分子標的薬の開発が求められている。
分子標的薬の開発において発症機序の解明が必須であるが、胆管がんの起源については、肝臓内に存在する肝内胆管細胞、成熟肝細胞、肝前駆細胞、などが提唱されているものの明確な結論が出ていない。
本発明者らは、これまでに肝臓特異的トランスポゾン変異挿入スクリーニングにより、胆管成分を発現する肝がんにおいてTraf3遺伝子の不活性型変異が認められた。
また、肝臓細胞特異的なTraf3遺伝子欠損により、肝細胞からの胆管細胞への分化が促進し、肝内胆管がんを自然発症することを見出した。
さらにシングルセル解析の結果から、Traf3の欠損に伴う胆管細胞がんの由来が成熟肝細胞であることを明らかにした。
さらに、このTraf3不活化による分化転換の実行分子の探索を行ったところ、進行に伴いNF-κB inducing kinase(NIK)分子の発現が顕著に増加し、またNIK阻害剤やsiRNAによって、分化転換や胆管細胞がんの増殖が抑制されることを確認した。
Data
- 肝内胆管がんの自然発症モデルである肝特異的Traf3/Pten DKOマウスにNIK阻害剤を投与したところ、胆管細胞への分化転換が抑制された(追加資料でデータ開示可能)
- ヒト胆管がん細胞株(HuCCT1)のゼノグラフトモデルにNIK阻害剤(NIK SMI: 左図)およびNIKに対するsiRNA(NIK KD: 右図)を投与したところ腫瘍(Ki67陽性細胞)の増殖が抑制された
- 胆管細胞がん患者のTRAF3発現量とNIK発現量に逆相関が認められ、NIK高値群の患者の予後が悪かった(追加資料でデータ開示可能)
Expectations
胆管がんの新規分子標的であるNIKに対する阻害剤のスクリーニングから共同で開発していただける企業を探しています。
特にキナーゼ阻害剤の開発に注力している企業や既にNIK阻害剤の開発候補品を持っている企業様とのコラボレーションに期待しています。
また、核酸医薬の開発可能性もあるターゲットであることから、核酸医薬開発企業へのライセンスと共同開発にも期待しています。
Patents
特許出願中
Researchers
小玉 尚宏(大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科)
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