インテグリン阻害薬による間質性膀胱炎治療

2024/05/13 11:30 - By Tech Manage

モデル動物と患者の遺伝子解析から同定されたこれまでの治療方法とは異なる新規の標的

Advantages

  • 全身投与が可能であり、患者の負担、不快感の高い膀胱注入を避けることができる
  • 近年承認されたDMSOの注入療法よりも高い効果が期待される
  • 別疾患で開発中のインテグリン阻害薬を適用拡大して開発することも可能

Background and Technology

間質性膀胱炎(IC)は頻尿や膀胱痛などの症状を特徴とする慢性の炎症性疾患であり、米国で約130万人、日本では約25万人の患者がいると推計されている。ICの病態には膀胱粘膜の機能障害や免疫学的機序など複数の要因が関与すると考えられているが、解明には至っていない。ICの治療に膀胱水圧拡張術があるが、奏効率は50%で、奏功期間6か月未満とされ、必ずしも著効を示さず、症状の再燃も問題とされている。近年DMSOの膀胱注入療法が承認されたが、根治療法は存在しておらず、アンメットニーズの高い疾患である。
本発明者らは、ヒトの間質性膀胱炎患者とモデル動物の膀胱組織を組み合わせて網羅的な遺伝子解析を行い、RGDバインディングサイトを有するインテグリンに関連する経路が活性化されていることを見出した。この結果をもとに、本発明者らは、既知の阻害剤であるRGDSペプチドをIC動物モデルに投与したところ、頻尿の症状が改善されることを見出した。疼痛に対する効果も示唆されている(データ非開示)。また、がんを対象とした臨床開発で効果が不十分であったためにPhase3で開発が中止されたシレンギチド(インテグリンαvβ3, αvβ5阻害剤)を用いた場合でも、同様に頻尿の症状が改善された。

Data

  • 塩酸を膀胱注入したICモデルにRGDSペプチドを腹腔内投与したところ排尿間隔がSham群と同等まで改善した。同様のモデルにシレンギチドを腹腔内投与したところ同様の効果が認められた。
  • RGDSペプチドおよびシレンギチドの排尿間隔に対する効果はDMSOの効果より高かった(データ非開示)

Expectations

この研究に基づく創薬の事業化を目指す企業との提携を希望します。シレンギチドの適用拡大や、他の疾患で開発されているインテグリン阻害薬をICに応用する可能性があると考えております。リポジショニング薬の開発を得意としている企業、インテグリンを標的とする薬剤を開発している企業、泌尿器系疾患の治療薬開発に関心のある企業との共同開発を希望します。

Patents

PCT/JP2022/033623

Researchers

堀田祐志先生(名古屋市立大学・大学院医学研究科・臨床薬剤学)
松本成史先生(旭川医科大学・研究推進本部)


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