炎症性サイトカインSema4Dを標的とした関節リウマチ治療薬開発

2025/03/18 15:17 - By Tech Manage

関節軟骨破壊を引き起こすマクロファージ由来サイトカインの新規創薬アプローチ

Advantages

  • 新規創薬標的の発見:関節リウマチの進行に関与する炎症性サイトカインSema4Dを同定、その新規シグナル伝達経路と標的遺伝子発現機構を決定し、新たな治療戦略
  • 多様な創薬アプローチが可能:細胞内シグナルが解明され、小分子薬、抗体医薬、mRNA医薬など幅広いモダリティでの開発が可能
  • スクリーニング系の確立:プライマリー細胞を用いた評価系を確立済み

Background and Technology

関節リウマチの発症と病態の進行には、インターロイキン1(IL-1)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカインが深く関与している。これらのサイトカインを抑制する治療薬は、一定の臨床効果を示すが、すべての患者に有効ではなく、副作用として感染症などの免疫系への強い影響が問題となっている。
本研究者は、関節リウマチの新たな治療ターゲットとなりうる、関節軟骨を破壊する新しい炎症性サイトカイン(Sema4D)を同定した。Sema4Dはマクロファージに由来し、NF-κBやc-Met-Ras-Erk l/2経路を介して軟骨分解酵素を誘導し、炎症反応を引き起こすことで関節軟骨を破壊することが確認された。Sema4D欠損マウスでは軟骨破壊が大幅に減少していること、さらにこれらの経路を遮断することで軟骨破壊が抑制されることが明らかになった。
この発見により、Sema4Dが関節リウマチの新たな治療ターゲットとなる可能性が示唆された。現在、Sema4Dのシグナル伝達経路が解明されており、ゲノム編集動物由来のプライマリー細胞を用いた高感度・簡易スクリーニング系も樹立されている。これらの知見を基にSema4Dを標的として、mRNA医薬やペプチド医薬など多様なモダリティを用いた新しい治療薬の開発が可能となり、今後の臨床応用が期待される。

Data

  • 生体内での軟骨破壊におけるSema4Dの関与を評価するために、 ゲノム編集によりSema4dノックアウト(KO)マウスを作成し、コラーゲンLPS誘発性関節炎(CIA)モデルに供した。その結果、CIA誘発性軟骨破壊は、野生型マウスと比較してSema4d KOマウスで大幅に減少していた。
  • 3週齢のICRマウスから大腿骨頭を単離し、Sema4D、Sema4DとNF-κB阻害剤(BAY11-7082)、c-Met阻害剤(SU11274)存在下で3日間培養した結果、Mmp13遺伝子の発現量が抑制された。

Expectations

本研究室では、プライマリー細胞を用いた関節軟骨細胞のスクリーニング系やノックインマウスの技術を有しています。現在、mRNA医薬の候補となるような分子についての研究開発も進めています。大阪大学では、それらの技術を用いて本研究により明らかになったシグナル伝達経路をターゲットとした創薬開発や共同研究を一緒に進めてくださる製薬企業様をしています。

Publications

Researchers

西村 理行 教授 (大阪大学大学院 歯学研究科)


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