頭蓋骨透明化試薬

2025/07/31 15:20 - By Tech Manage

新たに開発した頭蓋骨透明化試薬を用いた「SeeThrough」技術は、生きた動物の頭蓋骨を光学的に透明化することで、脳実質を高解像度で観察可能にする画期的なアプローチ。

Advantages

  • 生理的な脳環境を維持:オープンスカル法とは異なり、炎症反応、頭蓋内圧の低下、脳脊髄液の流出等は生じず、生体本来の脳活動を長期にわたり高精度で観察可能。
  • 高解像度・高感度イメージング: オープンスカル法で得られる画像と遜色のない解像度、およびSN比を実現する。
  • 深部観察:骨越しに脳深部(400µmまで)の神経細胞を鮮明に観察できる。
  • 迅速かつ簡便な適用性:わずか1時間程度で頭蓋骨を透明化し、即座にライブイメージングを開始できるため、実験効率が大幅に向上する。

Background and Technology

従来の脳イメージングでは、頭蓋骨を薄く削る方法、または頭蓋骨を完全に取り外すオープンスカル法が一般的に使用されている。しかし、これらの手法には侵襲性や観察視野の制限、炎症反応の誘発など、多くの問題があった。これに対し、「SeeThrough」は骨を除去することなく脳を観察できる、低侵襲・高精度な新手法である。

頭蓋骨透明化の原理と技術詳細
課題は、骨の高い屈折率(>1.56)に対する適合透明化手法の欠如であった。従来法では、
  • 有機溶媒:屈折率は十分だが、生体毒性が高い。
  • 水系溶媒:生体適合性は高いが、骨の屈折率には届かず、透明化不十分。
新たに開発した頭蓋骨透明化試薬は、生体親和性を維持しつつ、屈折率を骨に極めて近づけたものであり、化合物のスクリーニングと組成最適化により、長期間のライブイメージングに耐える実用性と透明度を両立した。

Data

  • 開発した頭蓋骨透明化試薬を用いて、マウスの脳を二光子顕微鏡で観察したところ、未処理の頭蓋骨越しではほとんど見えなかった神経細胞を非常に鮮明に観察。オープンスカル法で得られる画像と、解像度、SN比において遜色のないパフォーマンスを確認。
  • 透明化処理から24時間経過しても炎症マーカーの活性化が認められず、頭蓋内圧も正常に保たれている。
  • 最大で約400µmの深さまで神経細胞をクリアに観察でき、Layer 5までの神経細胞の可視化も確認。また、1ヶ月間のイメージングが可能であることも確認した。

Expectations

本技術のキット化開発や販売にご興味のある企業や、本技術を活用した創薬研究や顕微観察への応用に関心をお持ちの製薬企業や顕微鏡関連企業などを募集しております。
本技術は、生理的条件下での神経細胞の可視化や、疾患モデル動物における脳内変化の長期追跡など、従来法では困難だった研究への応用が期待されます。特に、グリンパティックシステムや脳境界領域の免疫細胞観察といった注目領域でも有用性が見込まれます。また、薬効評価・病態可視化を目的とした創薬研究への展開も可能です。
本技術に関する詳細な情報提供やご質問などございましたらお気軽にお問合せください。
また、ご興味ございましたら、まずは研究者とのweb面談の設定より進めさせていただきます。

Patents

出願中(未公開) 

Researchers

田井中 一貴 教授 (新潟大学 脳研究所) 
三國  貴康 教授 (新潟大学 脳研究所) 


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