選択的オートファジー機構(ゼノファジー)を促進する低分子化合物により細菌を除去する
Advantages
- 新規作用機序の低分子薬:本化合物がレセプター分子p62のS403リン酸化p62を増加させ、オートファゴソーム形成を促進。これにより、オートファジーを活性化して細菌の分解を促進する
- 細胞内寄生細菌への有効性:既存の抗菌薬では効果が乏しい、細胞内寄生細菌に対し、独自の作用機序を持つ本化合物は効果的な抗菌効果を発揮することが期待される
Background and Technology
肺NTM症は、非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)を原因とする呼吸器感染症で、近年急激な増加傾向にある。日本での2014年の調査では、肺NTM症罹患率は肺結核を上回る14.7人/10万人年と報告された。NTMは、結核菌群とらい菌群を除いた抗酸菌の総称で、250種以上が確認されている。M. aviumとM. intracellulareを総合したMycobacterium avium complex(MAC)が原因菌種として最も高頻度であり、約90%を占める。MACを原因菌とする肺MAC症に対しては抗菌薬を用いた治療が行われるものの、一般的な抗菌薬に耐性を示すことが多いことに加えて細菌の薬剤耐性化が問題となっている。また細胞内寄生菌であるため、再発リスクや薬剤の長期服用なども問題として考えられ、新たな薬剤候補が求められている。
選択的オートファジーにおける主要なアダプタータンパク質であるp62は、403番目のセリン残基がリン酸化されることで、ユビキチン化タンパク質のオートファゴソームへの取り込みが促進することが本研究者らにより見出されている。この発見に基づき、S403リン酸化p62を増加させる低分子化合物探索のためのスクリーニング系を構築し、タウオパチーモデルマウス(PS19)で脳内のリン酸化タウ凝集体の分解と海馬委縮を抑制する化合物群(ADI化合物)を見出すに至っている。ADI化合物は、細胞内寄生細菌をオートファジーにより分解する新たな治療薬候補として期待される。
Data
- M. aviumを感染させたマクロファージ細胞に対し、in vitroでADI化合物を作用させ、細胞内の生菌数の減少を確認した。
- クラリスロマイシン(CAM)耐性のM. aviumを感染させたマクロファージ細胞に対し、CAMとADI化合物を併用投与したところ、濃度依存的な細胞内生菌数の減少を確認した。
- in vivoでの試験を進行中
Expectations
本化合物を用いた治療薬開発にご興味のある企業を探索しています。また、本化合物の評価に関してもご相談可能です。ご興味ございましたら、研究者とのお打合せをご提案いたします。
Patents
出願中 (未公開)
Researchers
水田 賢志 助教 (長崎大学 医歯薬学総合研究科)
松本 弦 准教授 (大阪公立大学 大学院医学研究科)
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