ロドプシンを利用した高効率な物質生産系

2025/02/26 14:16 - By Tech Manage

宿主にロドプシン変異体を導入し、光エネルギーを活用することで、バイオプロセスにおける物質生産性を向上させる

Advantages

  • 生産性の向上:光エネルギーを用いたATP再生は、宿主生物の自然な代謝を阻害することなく、バイオプロセスにおける律速要因となる細胞内エネルギー不足を補う
  • 多様な目的物質生産系・宿主への対応:ロドプシンの様々な変異体作成によるライブラリ構築を進行中

Background and Technology

生体反応を利用した物質生産工程であるバイオプロセスは、常温・常圧下で進行するため、一般的に高温・高圧を必要とする化学プロセスと比べてCO₂排出量の削減が期待されている。また、化学プロセスが複雑な反応を段階的に進める必要があるのに対し、バイオプロセスは細胞内の効率的な代謝系を活用することで、特に炭素数の多い複雑な化合物の生産において競争力を発揮すると考えられている。このため、市場規模の拡大が見込まれており、大規模な投資や実用化を目指した研究開発が盛んに行われている。一方で、細胞内のエネルギー源であるATPは、代謝反応や物質合成を支える重要な役割を果たすが、目的物質の生産性を高めるとATPの消費が加速し、ATP不足により生産性が限界に達する課題がある。さらに、ATP不足は細胞の生育やストレス耐性の低下を引き起こし、最終的にはプロセス全体の効率を阻害する要因となる。
本発明者らは、微生物由来のロドプシンというタンパク質に着目し、これらの問題を解決する方法を見出した。ロドプシンは細胞膜のイオンチャンネルの一つであり、光エネルギーを利用してプロトンを細胞外に排出するタンパク質である。細胞内でATPを合成する際は細胞外からプロトンを取り込む必要があるが、ロドプシンを宿主に導入することでプロトンが積極的に細胞外に排出されるため、ATP合成酵素はプロトンを効率的に再取り込みしてATPを再生する(下図)。これによりATP不足が解消され、有用物質の生産性向上が可能になる。さらに、ロドプシン遺伝子に変異を加えて機能を改良し、生産性や細胞増殖がさらに向上する高機能なロドプシンの開発も行っている。 また、光でATPを供給できることから、プロセスによっては、炭素源の削減、通気量(攪拌)の削減、二酸化炭素排出量の削減につながる可能性もある。
図 光エネルギーをATP再生に変換するシステム

Data

  • ロドプシンR17とその変異体(R17-N1、R17-N2、R17-N11)を導入した大腸菌にグルタチオンを産生させたところ、グルタチオン濃度、細胞当たりのグルタチオン含有量が向上した変異体(R17-N1)を得ることができた(下図)。

Expectations

発明者らは本技術の社会実装を目指し、396bio社(https://www.396bio.co.jp/)を立ち上げています。本技術にご興味がある企業様との協業により研究開発を加速していきたいと考えています。
本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せや、静岡県立大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示が可能な場合もありますので、お気軽にお尋ねください。

Publications

・大学からのプレスリリース:https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/news/20220406-1/

Patents

  • 特願2022-162218、US18/045012、EP.22200274.A

Researchers

原 清敬 准教授 (静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科) 


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