変態超塑性金属は、脆性材料と金属材料を拡散接合した後の冷却段階において発生する熱応力を除去する
Advantages
- ろう付け接合では対応できない高温環境下での使用が可能。
- 熱応力緩和は、高強度化、脆性破壊リスクの低減、材料の安定性向上、優れた曲げ加工性などが期待される。
Background and Technology
脆性材料と金属材料の異材接合は、両者の特性を活かし、より高度な機能を持つ製品を実現するために、様々な分野で活用されており、電子部品(セラミック基板と金属電極の接合や半導体パッケージの封止など)や自動車部品(エンジン部品のセラミックコーティングや排ガス浄化装置のセラミック基板と金属ケースの接合など) 、航空宇宙産業(耐熱セラミックと金属の複合材料やロケットエンジンのノズルなど)、医療機器(バイオセラミックと金属の接合(人工骨、インプラントなど))、建築材料(ガラスと金属の複合材料、セラミックタイルと金属フレームの接合)などが例示される。
濡れ性を有する「ろう材」は熱応力を緩和する中間材として、脆性材料と金属材料の接合に従来利用されている。しかしながら、濡れ性に依存するろう付け接合は高強度化が困難であった。さらに一般に用いられるろう材は低融点合金が用いられるが、接合体製造後の高温下における使用が制限されるほか、接合母材とは大きく化学組成が異なる中間材となるため、接合部での機械的特性が母材とは大きく異なってしまうといった問題があった。
本研究者らは、核融合炉開発において、大きく熱膨張数が異なるタングステンと鉄鋼材料の接合技術の研究開発を進めている中で、特殊な熱サイクルを加えた場合にのみ超塑性が発現する金属を中間材とした熱応力緩和を着想した。なお、熱応力緩和は、冷却中の相変態誘起性のクリープ変形が促進する効果によるものと考えられる。
Data
- S50C鋼と中間材として、タングステンW(エスタン)とODS鋼を拡散接合した。
- 拡散接合した材料に対し、微小4点曲げ強度試験を実施した(結果は図を参照)。CP-4の方法で拡散接合した接合体は破壊応力の平均値が377 MPa、最大値が478 MPaであった。この結果は中間材を純鉄とした接合体の破壊応力の平均値324 MPaよりも良好な値であった。
Expectations
本技術を基にした接合技術の活用や本研究者とのコラボレーションにご興味のある企業を探索しております。タングステンと鉄の組み合わせ以外の材料に関するコラボレーションも歓迎いたします。ご興味ございましたら、追加情報の提供や次のステップとして本件研究者との面談をご提案いたします。
Patents
Researchers
能登裕之 助教 (核融合科学研究所)
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