ポリリジンデンドリマー誘導体、アニオン性高分子、核酸を複合化したナノ粒子
Advantages
- ポリリジンデンドリマー誘導体、アニオン性高分子、核酸を複合化したナノ粒子
- 低毒性で安全性の高い設計:使用するポリリジンデンドリマー誘導体およびアニオン性高分子は生分解性材料で構成されており、蓄積毒性が低い。また、表面をアニオン性高分子で被膜しているため毒性が低く、生体における高い安全性が期待される。
- 独自のナノボール技術:長崎大学にて開発された技術であり、他のDDS技術に関する特許利用関係を回避することが可能。
Background and Technology
遺伝子医薬品に用いられる核酸は負電荷をもつ高分子であり、負に帯電した細胞膜との静電的な反発により細胞内取り込みが難しく、さらに生体内の酵素で速やかに分解される。これに対し、様々なカチオン性高分子やカチオン性脂質が開発されてきたが、これらは、血液成分との凝集による組織有害性が懸念されている。
本研究者らのグループでは、「ナノボール」と名付けられたアニオン性のDDSキャリアの研究開発を進めている。ナノボールは、核酸、カチオン性高分子、アニオン性高分子の組み合わせによるナノ粒子である。また、各材料の選択により核酸を肺や脾臓などの標的臓器へ高効率に送達できることも実証している。ナノボールに使用するカチオン性高分子として、遺伝子発現効果が高いことが知られているポリエチレンイミンを用いてきたが、非分解性高分子であるため蓄積毒性の懸念があった。生分解性のカチオン性高分子の多くは、ポリエチレンイミンと比較するとエンドソームから細胞質への移行性に乏しく、遺伝子導入効率が十分でなかった。本研究者らは、lysineのみで構成される生分解性のポリリジンデンドリマーに着目し、遺伝子導入効果の高い誘導体を探索した。今回、ポリリジンデンドリマー(KG5)の末端をフェニルアラニンで修飾したPhe-KG5が単独ではほとんど遺伝子導入効果を示さないにもかかわらず、他のカチオン性化合物と組み合わせることで劇的に遺伝子導入効果を高めることを発見し、一体型デンドリマーの開発にも成功した。さらに、本発明をナノボール技術に応用することで毒性を抑えつつ高い遺伝子発現効果を得る製剤を開発した。

Data
- ポリリジンデンドリマー(KG5)の末端をフェニルアラニンで修飾したPhe-KG5を、様々なカチオン性化合物と混合し、ルシフェラーゼをコードしたpDNAとの複合体を作成しB16細胞へ遺伝子導入したところ、Phe-KG5を加えないものと比較して、遺伝子導入効果を顕著に向上することに成功した。特に、KG5の末端をアルギニン修飾したArg-KG5とPhe-KG5を併用することで、生分解性材料でありながらlipofectamine3000と同等の高いルシフェラーゼ活性を実現した。
- 一体型の製剤として、KG5にフェニルアラニンとアルギニンを修飾したArg-Phe-KG5を新たに開発し、Colon26細胞を用いた大腸がん腹膜播種モデルマウスに対し、c-Myc siRNA/Arg-Phe-KG5/γ-PGAを投与したところ、高い腫瘍増殖抑制効果が得られた。Arg-Phe-KG5を用いたナノボールは無修飾のポリリジンデンドリマーを用いた場合より約10倍程度効果が高かった。
Expectations
本DDSキャリアを用いた治療薬・遺伝子導入試薬の開発や評価にご興味のある企業を探索しています。また、本発明に関する詳細な説明や研究者との直接的な打ち合わせも承ります。ぜひお気軽にお問い合わせください。
Patents
Researchers
黑﨑 友亮 助教 (長崎大学 医歯薬学総合研究科)
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