Piezo1を活性化する薬剤によりメカニカルストレス応答性を活性化させるアプローチで、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症患者における骨量・骨強度を改善。
Advantages
- 新しく見出されたグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の病態メカニズムに対する治療アプローチ
- Piezo1アゴニストであるYoda1をグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症モデルマウスに投与し、骨量・骨強度の改善を実証
Background and Technology
グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(Glucocorticoid induced osteoporosis, GIOP)は自己免疫疾患など多くの疾患の治療で用いられるグルココルチコイドの服用により生じる最も重大な副作用の一つである。長期間グルコルチコイド治療を受けている患者の約30-50%が骨折を受傷すると報告されている。そのためGIOPは小児から高齢者に至るまで患者数も多く、閉経後骨粗鬆症とは異なり骨密度だけでは骨折リスクを予測できないことが特徴であり、その詳細な病態メカニズムは不明であった。また既存の骨粗鬆症治療薬では十分な骨折抑制効果が得られない場合も多く、詳細な病態の解明による新たな治療薬の開発が求められていた。
今回、本研究者らはGIOP患者と不動性骨粗鬆症患者の骨構造の類似性に気づき、GIOP患者では骨細胞における力学的負荷(メカニカルストレス)への応答性が低下しているのではとの仮説を立て、鋭意研究を進めた。その結果、骨細胞におけるメカニカルストレス応答カルシウムイオンチャネルPiezo1の発現低下が、GIOPの病態形成の根幹を成すことを見出した。また、網羅的遺伝子解析の結果、不明であったPiezo1の正の転写因子としてHes1を新たに見出した。実際にPiezo1のアゴニストであるYoda1の投与によりGIOPモデルマウスではメカニカルストレス応答性が回復し、骨量や骨強度が改善することを確認した。これらのことから、Piezo1またはPiezo1の発現を調節するHes1の発現を促進する物質が、既存治療薬より有効なGIOPの新規予防・治療薬となることが期待される。

Data
- ヒトGIOP患者と非GIOP患者の骨組織中のPIEZO1の発現量を比較した結果、GIOP患者では骨細胞においてPIEZO1の発現が低下していることが免疫染色とウェスタンブロッティング蛋白定量より明らかとなった。
- グルコルチコイド投与(デキサメタゾン:DEX)によって発症するGIOPモデルマウスを作製し、Piezo1のアゴニストであるYoda1を腹腔内投与したところ、Yoda1はGIOPモデル動物の骨量、骨強度の低下をほぼ完全に抑制した。
- GIOPモデルマウスではメカニカルストレスによる骨量増加が減弱していたが、Yoda1投与により対照群と同程度まで改善した。
Expectations
本研究プロジェクトを基にした薬剤開発にご興味のある企業を探索しております。また、以下のような観点にご興味のある企業とのコラボレーションも歓迎いたします。
- 骨へのDDS技術とPiezo1アゴニストを組み合わせたGIOP治療薬開発
- ビスホスホネート製剤とPiezo1アゴニストの薬物複合体によるGIOP治療薬開発
- Hes1をターゲットとしたGIOPの遺伝子治療開発
- 新規Piezo1アゴニストを用いたGIOP治療薬開発
本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたらお気軽にご相談ください。
Publications
Ochiai N, et al. JCI Insight. 2024 Dec 6;9(23):e179963. doi: 10.1172/jci.insight.179963
Patents
PCT/JP2025/002705
Researchers
蛯名耕介 准教授 (大阪大学大学院 医学系研究科 整形外科)
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