ポリファーマシー対策における抗コリン性薬物有害事象リスクの予測システム

2024/07/31 11:10 By Tech Manage

薬剤の抗コリン作用のレベルを定量化した抗コリン負荷スコアは、高齢者の薬物療法を最適化し、多剤併用による有害事象リスクの低減につながることが期待される

Advantages

  • 日本の高齢者に頻用される260薬剤の抗コリン作用を0~3にスコア化。
  • 薬理学的エビデンスに基づくスコアで、ムスカリン性アセチルコリン(mAChR)受容体との結合活性と血液中の薬物濃度を基に決定。
  • 国内外の学会で高い評価を受け、第65回日本老年医学会学術集会「優秀演題賞」など、数々の賞を受賞。

Background and Technology

社会の高齢化に伴い、多病を抱えてポリファーマシー状態にある高齢者の増加が著しく、医療介護現場から地方自治体、国レベルまでその対策が求められている。ポリファーマシーの高齢患者には、口内乾燥・口渇、便秘、食欲不振、摂食・嚥下障害や認知機能の低下などの症状が多く認められ、服用薬剤の抗コリン作用による影響が大きいと考えられている。
抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリン受容体を遮断し、作用を示すが、抗コリン薬に分類されていなくても抗コリン作用を示す薬剤も多数存在する。催眠薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、抗うつ薬などの精神作用薬、循環器系薬、コルチコステロイド薬、抗生物質など世界で600 以上の薬剤が該当する。65 歳以上の患者では抗コリン作用を有する可能性のある薬剤の使用率が 47% との報告もある。個々の薬剤の抗コリン作用は小さくても、多剤併用により作用が相加的となり、抗コリン性有害事象が発現する。また、ポリファーマシー状態では抗コリン薬が強弱交えて複数含まれていることもあり、トータルの抗コリン作用を一目で判断することも容易ではない。
薬剤の抗コリン作用を定量的に評価する尺度はいくつか報告があるものの、医師などの臨床経験に基づくものが多く、バラツキや不一致も指摘されている。また、海外で報告されているスコアをそのまま日本で使うことは、発売されている薬剤が日本と海外で異なることなどの課題もあった。
このような背景から、本発明者らは日本版抗コリン負荷スコアを開発した。このスコアは、日本で高齢者に頻用される薬剤260剤を対象に、ムスカリン性アセチルコリン(mAChR)受容体への結合活性と臨床服用時における最高血中濃度を基に評価し、0〜3のスコアで定量化したものである。

Development Stage & Future Research Plans

  • 高齢者で頻用される薬剤(260剤)について、ラット脳細胞膜におけるmAChR結合アッセイを行った。薬剤(100μM)の受容体結合活性(IC50値)と臨床量服用時のヒト最高血中濃度(Cmax)を用いて0~3の段階にスコア化した。
  • 処方薬の合計スコアと有害事象発現に関する評価を開始しており、対象者を増やした評価も予定。
  • 企業との協業により、本スコアを用いたポリファーマシー対策のアプリ・ソフトウェアの開発を希望。

Expectations

本技術を基に、新たなポリファーマシー対策の開発を共に進めていただける企業様を探しています。特に以下の企業様には、ぜひご興味を持っていただきたいと考えています。
  • 医療向けソフトウェアを開発されている企業様
  • 本技術の利用にご関心のある薬局やドラッグストア様
ご興味ございましたら、研究者とのご面談も設定可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

(参考:抗コリン負荷スコアの例)

Publications

Yamada et. al., Geriatrics and Gerontology International, 23: 558–564 (2023)

Patents

特許出願中(未公開)

Researchers

山田靜雄 特任教授(静岡県立大学大学院薬学研究院、薬学研究院附属薬食研究推進センター長) 
  • 第6回日本老年薬学会学術大会 “優秀演題賞” 受賞
  • 第12回国際老年病・老年医学会(IAGG)アジア・オセアニア地区国際会議 “Outstanding Presentation Award” 受賞
  • 第65回日本老年医学会学術集会 “優秀演題賞” 受賞
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