VEGFR-2シグナル活性化による血管新生促進剤

2024/05/29 10:52 By Tech Manage

新規の血管新生因子由来の分子であり、虚血性疾患への治療応用やVEGF代替試薬としての活用が期待される。

Advantages

  • 研究者らは新規の血管新生因子として、バルトネラ属細菌より分泌されるBafAを見出した。
  • 特異性が高く、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2)のみに作用する。がんの血行性転移促進にも関与するVEGFR-1に反応しないため、副作用の少ない薬剤となることが期待される。
  • VEGFR-2は血管新生シグナル伝達で最も重要であり、高い効果に繋がることが期待される

Background and Technology

虚血部位に血管新生因子を注入し、血流を改善させる血管新生療法は、心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症などの虚血性疾患の治療に繋がることが期待され、研究開発が進められている。内因性の血管新生因子であるVEGF-AをコードするmRNAは、心不全に対する治療薬として進められていた。
本研究者らは、バルトネラ属細菌が引き起こす血管新生に着目して研究を進めており、菌が分泌する血管内皮細胞の増殖を直接促進する物質を新たに見出し、BafA(Bartonella angiogenic factor)と命名した (Nature Communications, 2020) 。BafAの本態はオートトランスポーターと呼ばれるグラム陰性細菌がもつ分泌装置であり、N末端領域の一部が菌体外に分泌される。分泌されたBafAタンパク質は、VEGFR-1やVEGFR-2にも作用するVEGF-Aとは異なり、VEGFR-2のみに作用し、MEK-ERK経路を活性化することで、血管内皮細胞の増殖を促進する。
また、本研究者らは、BafAの創薬応用を目指し、30種以上のバルトネラ菌からBafAホモログをクローニングし、それらの組換えタンパク質を作製して生物活性と構造安定性を調べた。その結果、それらの配列を組み合わせた種々のキメラタンパク質の中から、VEGF-Aを超える高い活性をもつ新たなBafAアナログの作出に成功した。

Data

  • BafAアナログは0.08 nMにおいて、血管内皮細胞の細胞増殖促進に関し、VEGF-Aよりも約1.4倍高い効果を示した。
  • BafAアナログは、VEGFR2シグナルの活性化に関し、VEGF-Aよりも高い効果を示した。
  • マウス下肢虚血モデルに対し、BafAアナログ0.1μgを投与(i.m.)し、下肢虚血の血流を改善することを確認した。

Expectations

本研究成果を基にした薬剤開発にご興味があるパートナー企業様を探しています。詳細をご希望の際には、本発明者とのご面談も可能です。
モダリティの検証や対象疾患の選定などが今後の技術的課題として想定され、企業とのディスカッションを希望する。

Patents

  • PCT/JP2023/008410
  • 特許第7229519号

Researchers

塚本 健太郎 先生 (大阪大学 微生物病研究所 特任准教授)研究室HP


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