脳波データに対し、時系列解析を行うことで、ヒトの脳活動を識別可能なシステムであり、アルツハイマー病などの神経変性疾患の診断や特定の運動動作を推定する
Advantages
- 脳波の時系列解析により見出された新たな特徴量に基づく識別システム
- 従来のフーリエ変換では単離できない特徴量
- 被験者の脳活動の高精度な識別が期待できる
- 本システムは高速に識別可能
- 脳波に限らず、様々な時系列信号データへ適応可能であらゆる振動現象の識別が期待できる。
Background and Technology
脳波や脳磁図などの脳信号の解析は、脳の活動の理解や、アルツハイマー病やてんかんなどの病気などの診断、Brain-Machine Interface (BMI)などの応用が期待され、様々な手法が研究開発されている。
脳機能は多くの神経細胞の相互作用と協調によって生み出されており、非常に複雑で、高次元のシステムである。高次元のシステムをそのまま解析することは、計算量が膨大となるため、難しく、次元を削除するアプローチが必要となってくる。近年、高次元の制御システムの次元削減法としてDynamic Mode Decomposition(DMD)が注目されている。DMDは流体力学に端を発する次元削減手法で、高次元時系列データから、主要な時空間的振る舞いのモードを取り出し、ダイナミクスの次元を削除するアプローチである。研究者らのグループでは以前、脳信号の1種であるECoG信号を対象にDMDを用いた脳情報解読方法を開発し、フーリエ変換では抽出できなかった電極間の位相関係の中で運動に特徴的な成分を抽出することにより、運動内容の推定精度が改善することを発表している。
研究者らのグループでは、DMDを用いた脳情報解読方法の改良について研究を重ねられ、脳波計測によって得られた時系列データを複数のモードに分解することによって得られるモード情報には、脳活動の特徴をよく表した特徴量として利用可能である情報が含まれていることを見出した。この情報を利用することで、複数の脳活動の各々を識別することが可能となることを確認した。本システムが有用な脳活動識別システムであるが、任意の時系列信号に適用することができるため、様々な時系列信号解析の精度向上も期待され、広い範囲の応用も考えられる。
Expectations
- 健常者の脳波データとアルツハイマー患者の脳波データを用いて、本システムにより脳活動を識別した。識別精度は約80%であった。
- 健常者の脳波データとてんかん患者の脳波データを用いて、本システムにより脳活動を識別した。識別精度は約95%であった。
- 脳波以外の時系列データへの適応を今後検証予定。
- 本システムとは別の方式であるが、被験者の脳波信号からアミロイドPET検査の結果を推定するシステムもある。
本システムの活用や本システムを利用した疾患診断技術の実用化にご興味のある企業を探索しております。ご興味ございましたら、追加情報の提供や次のステップとして本件研究者との面談をご提案いたします。
Patents
- 出願中 (未公開)
Researchers
栁澤 琢史 教授 (大阪大学 高等共創研究院・脳神経外科)
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