結核菌の持つ糖脂質である本化合物はアジュバントかつT細胞を直接活性化する抗原であり、新規の脂質ワクチンとしての用途が期待される。
Advantages
- デュアルリガンド特性: 本化合物は、自然免疫受容体を活性化するリガンドでありながら、T細胞抗原としても機能する。
- 幅広い適用性: 本化合物は、遺伝子多型のないCD1b分子により抗原提示されるため、MHC型に関わらず万人に対するT細胞活性化が可能である。
Background and Technology
BCGワクチンは結核に対する唯一のワクチンであるが、その有効性にはばらつきがあり、民族や地域によっても異なるため、一部の国ではあまり利用されていない。また、抗生物質による治療は薬剤耐性菌の発生が懸念される。そのため、ばらつきが少なく、高い効果を示すワクチンの開発が求められている。
本研究者らのグループでは、ペプチド抗原を認識する通常のT細胞(conventional T cell)とは異なり、様々な脂質や代謝産物を認識する自然免疫型T細胞(unconventional T cell)の抗原の同定や、その機能解明を目的とした研究を進めている。今回、結核菌の細胞外膜に存在する特徴的な脂質に関し、さらなるT細胞抗原の探索を目指して研究を進めたところ、本化合物を見出すに至った。
本化合物は自然免疫受容体であるMacrophage-inducible C-type lectin receptor(Mincle)のリガンドであり、アジュバント作用を有することが知られている。加えて、本化合物はT細胞抗原としてCD4陽性T細胞を活性化し、IFN-γやTNFといったエフェクター分子や、さらにはPerforinやGranzyme等の細胞傷害性分子の産生を促すことがわかった。これにより、本化合物はアジュバント機能を備えた脂質ワクチンとしての可能性を持ち、次世代ワクチンの開発に貢献すると考える。
Expectations
- 複数のヒト末梢血中に当該化合物を認識するT細胞が存在することを見出しており、それらのT細胞はこの糖脂質を認識するための共通のTCRモチーフを持つことがわかった。
- 本化合物を認識するT細胞はBCG摂取歴のない健常者の末梢血中にも存在しており、結核患者ではその存在割合が増加する傾向が見られている。
- マウスはCD1b分子を有さないため、in vivoでの評価についてはヒト化マウス、あるいはモルモットやサルを用いた実験が必要になる。
- 本化合物は完全フロイントアジュバントの構成成分であるが、水溶性が比較的高いため、アジュバントとして広く応用することも可能である。また、単一化合物であるため、天然由来の混合物よりも毒性懸念の少ないアジュバントとなることも期待される。
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Patents
出願中(未公開)
Researchers
山崎 晶 先生 (大阪大学 微生物病研究所 教授)
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