実廃水から発電+リン回収する廃水処理装置

2023/05/08 11:46 - By Tech Manage

微生物燃料電池(微生物の働きにより廃水中有機物から発電)を用いて、発電と同時に廃水中のリンを回収できる廃水処理方法

Advantages

  • 有機性廃水の処理において電気エネルギーを回収し、CO2排出量を削減する
  • 同時に廃水から有効資源であるリンを回収する

Background and Technology

家畜排せつ物処理は焼却または発酵させて堆肥化することが多いが、水分を多量に含む場合は廃水として処理される。また、有機性汚濁物質を含む工場廃水は、生物学的廃水処理法により周辺環境に影響を与えない水質に処理し、下水道や河川・海域に放流されている。しかし、従来の廃水処理法である活性汚泥法は、曝気のための電力消費や大量に発生する余剰汚泥(廃棄物)の処理に伴う、CO2排出量が大きいことが問題である。
微生物燃料電池は、発電菌と呼ばれる微生物の働きにより、廃水中の有機物を分解除去すると同時に、発電を行う。活性汚泥と異なり曝気を不要とし、余剰汚泥の発生量も少ないため、CO2排出量を削減することができる。さらに廃水中の有機性汚濁物質の持つ化学エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
廃水中に多く含まれるリン(国内20万t/年)は、未処理で水環境中に放出されると湖沼や海域の富栄養化の原因となり、環境に悪影響を与える。また、資源としてのリンは、農業分野で窒素やカリウムとともに化学肥料の主要成分となっているほか、⾦属の表⾯加⼯・⼯業⽤触媒・⾷品添加物・農薬や殺⾍剤など幅広い⽤途で使われている。しかしながら、廃水からリンを回収する従来の方法には多量の薬剤投与が必要であり、十分に除去・回収されずに処理されている。全世界の採掘可能なリン鉱⽯資源は約150億トンであり、農業生産がさらに拡大すれば将来的に枯渇する恐れがあり、リン鉱⽯をほぼ100%輸⼊に頼る⽇本では、安定的なリンの確保が⼤きな課題である。


これらの課題に対し、廃水処理において微生物燃料電池を活用し、同時に有効資源であるリンをカソード上に析出させて回収できる技術を開発した。

Expectations

  • 現在までにラボスケールのプロトタイプ装置を用いて養豚廃水を処理し、コンセプトを実証済
  • 発電出力向上・コスト削減のため安価で高性能なカソード・電極材料を開発するため、微生物電池・電極材料などを協働で開発するパートナー企業を募集
  • 実廃水による中~長期間の試験を実施するため、水処理関連企業とのパートナーシップを希望

Publications

Patent

Researchers

廣岡佳弥子 准教授(東海国立大学機構 岐阜大学 流域圏科学研究センター)

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