巨大DNA分子のサイズ分析法

2022/05/25 18:22 - By Tech Manage

10kbp以上のDNA分子の伸長緩和時間計測を用いたサイズ分析技術であり、マイクロ・ナノ流体デバイスと電気泳動法を組み合わせた手法による分析技術。

Advantages

  • 既存手法とは異なる新しい原理に基づくサイズ分析手法。
  • パルスフィールド電気泳動法(PFGE)よりも短時間での解析が可能。

Background and Technology

 パルスフィールド電気泳動法(PFGE)は、標準的なゲル電気泳動法の一つであり、ゲノムタイピングやシーケーシングなどの解析に用いられている。しかしながら、その解析には数日必要であることからより迅速な手法が求められている。
 これに対し、マイクロ・ナノ流体デバイスによるサイズ分離法が開発されている。しかしながら、これらの手法は、マイクロ流路中にゲルの代わりに「分子ふるい」として機能する微細構造を形成して、その中を電気泳動するDNAの移動度が分子サイズに依存することを利用し、サイズ分離を行うことを原理としているため、解析には大量のサンプルが必要となり、すべてのサンプルがマイクロ・ナノ流体デバイスを通過する時間を待つ必要があった。
 今回、研究者らは、DNA分子を外力により伸長し、再び戻るまでの緩和時間を測定することに基づく新しい方法を開発した。緩和時間は分子数に依存することが報告されており、緩和時間から分子サイズを同定することは、微量サンプルでの解析や解析の前処理、解析時間の短縮が期待される。本デバイスにおいて、DNA分子はマイクロ流路中でランダムコイル状の形態となっているが、電圧印加によりナノスリットを通らせ、分子を一次構造に引き延ばし、電圧印加を止めた際にそれが再びランダムコイル状に戻るまでの緩和時間を光学顕微鏡観察により測定する。

Expectations

  • これまでの研究で、ナノスリット流路の試作機を作製し、λ DNA (48.5 kbp) とT4 DNA (166 kbp) 混合試料の 緩和時間計測によるサイズ分析実験において、サイズ判別を研究室レベルで実証済。
  • 本技術は、細菌の微生物株の異同の識別、酵母の核型識別、長鎖DNAのクローニング、核酸医薬の精製・検査等での活用が期待される。今後は、様々な用途に応じた本技術の適応可能性の検証が必要。
  • 使用するマイクロ・ナノ流路デバイスの開発や装置化・実用化の研究開発が必要。

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Patents

名古屋大学より出願中

Researchers

伊藤 伸太郎 准教授 (東海国立大学機構 名古屋大学 工学研究科) 


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