治療反応性や予後を予測する次世代診断法

2024/06/05 10:24 By Tech Manage

独自開発したIBMseq法により、腫瘍組織内における複数のタンパク質間の相互作用を定量的に解析する病理組織の新規検査方法

Advantages

  • 少量の検体から複数のタンパク質間で生じる複雑な相互作用もしくは近接情報(多因子間相互作用)を一度に検出可能。
  • 検体組織内の空間的な相互作用も解析でき、より生体内に近い情報が得られる。

Background and Technology

腫瘍微小環境では、がん細胞、免疫細胞、線維芽細胞など多様な細胞によって構築され、細胞間、リガンド間、細胞内にかかわる様々なタンパク質間の複雑な相互作用によって腫瘍の動態が規定されている。近年、様々な免疫治療薬や分子標的薬の開発が進み、治療選択の幅が広がったものの、患者によって治療反応性が異なるため、治療薬が有効な症例とそうでない症例が存在する。多くの薬剤の中から治療反応性を一括で高精度に予測し、最適な治療法を選択することが理想的と考えられるが、そのような方法はほとんどない。また、タンパク質間相互作用は、従来、免疫沈降法を基本とした生化学的な手法によって解析されてきたが、多量の検体を必要とする手法であり、空間的に区分されたタンパク質間相互作用を解析することも困難であった。
このような背景の中、本研究者らは複数タンパク質間の相互作用を解析する手法(Interaction Between Molecules seq: IBMseq法)を開発した。本手法は、1分子ずつを識別するためのDNAバーコード を標識した抗体とPCR反応を区別するためのランダム配列を組み込んだ複数のプライマー(UEI)を用い、ハイドロゲルポリマー中でPCR を行う。プライマーはポリマーに結合されており、PCR産物では空間情報が保持された、DNAバーコードと各UEIからなるネットワーク構造が形成される。その後、次世代シークエンシングにより、各UEIと抗体分子間の結合数をカウントし、多因子間相互作用を解析することが可能となる。そのため、IBMseq法は細胞内外だけでなく、組織内における多因子間相互作用を定量的かつ空間的に解析する用途などが期待される。

Development Stages & Plans

  • B細胞を対象に細胞膜上と核内での多因子間相互作用を検出できることを確認した。また、3分子間の相互作用と時間経過に伴う変化も確認できることを見出した。
  • 腎癌組織において、PD-1⇔PD-L1間及びHLA⇔HLA間など、の相互作用をIBMseq法で確認済み。
  • 腫瘍組織における様々な免疫チェックポイント因子間の相互作用、細胞表面マーカー間の相互作用、転写因子との相互作用などの解析への応用化可能性を検証中
  • 免疫チェックポイント阻害薬への応答性や予後判定への応用可能性について検証中

Expectations

本発明を使った次世代の診断技術で患者の層別化や予後診断にご興味のある診断技術関連企業を探しています。大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示の他、本発明者とのご面談も可能です。ご希望等ございましたらお気軽にお尋ねください。

Patents

Researchers

二村 圭祐 教授 (群馬大学 未来先端研究機構)


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