腸内細菌叢に着目した前立腺癌の診断・治療薬開発

2022/12/26 16:15 By Tech Manage

日本人における高悪性度の前立腺がんに特徴的な腸内細菌叢を発見、
本腸内細菌叢をターゲットとした診断や治療薬開発が期待できる。

Advantages

  • 高悪性度の前立腺がんに対し、PSA検査よりも感度・特異度、AUCが高い

Background and Technology

 前立腺がんは、近年高齢化とともに発症数が増加し、国内では男性で最も多いがんとなった。食生活と密接に関連するがんでもあり、日本における近年の罹患率上昇は、欧米型食生活の普及が一因であると言われている。現在、前立腺癌の早期診断法として血中PSA検査が広く行われており、前立腺癌と正常を区別できるが、治療の必要がある高悪性度の前立腺癌を検出することはできない。PSA高値で異常を指摘された患者は侵襲度の高い生検を行う必要があり、過剰診断、過剰治療が問題となっている。そのため、高悪性度の前立腺癌を診断するバイオマーカーが求められている。

一方、腸内細菌叢やその代謝産物は、大腸がんなどの様々な疾患に関与することが最近報告されており、新たな診断・治療ターゲットとしても着目されている。今回、研究者らは、前立腺がん進展のメカニズム等を解明する研究において、腸内細菌に着目し、高悪性度の前立腺癌患者に特徴的な細菌(リケネラ、アリスティペス、ラクノスピラなど)を発見した。また、本研究グループでは、以前、遺伝子改変前立腺がんマウスモデルにおいて、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が血中に入り、肝臓などからのIGF-1の産生を促進し、前立腺がん細胞の増殖が起こることを見出している。本技術の腸内細菌との重複もあり、ヒトにおいても同様のメカニズムで前立腺がん細胞の増殖が起こる可能性が予想される。

Expectations

  • 大阪に住む152人の前立腺がん疑いの日本人から大便を採取し、高悪性度の前立腺がんに特徴的な腸内細菌叢を検出した。18種類の細菌から得られた、便中に含まれる細菌前立腺指標 (FMPI: Fecal microbiome prostate index)を用いた高悪性度前立腺がんの診断能がPSA検査よりも有用であることを確認した。
  • 全国の病院より約1000検体収集しており、現在解析中である。また本研究グループでは初発の前立腺がん患者由来だけでなく、去勢抵抗性前立腺がん患者、ホルモン療法後の前立腺がん患者由来の検体を収集している。
  • 本研究成果や研究グループが収集した検体等を活用し、診断薬企業との前立腺がんの診断または製薬企業との治療薬開発のための共同研究開発を希望している。
  • 本技術にご興味ございましたら、次のステップとして研究者の先生方との面談設定をご提案いたします。

Publications

Patents

Researchers

藤田 和利 准教授(近畿大学 医学部)

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