~ 中分子ペプチド創薬で課題の疎水性ペプチドの水溶性・合成効率を飛躍的に向上させる ~
Advantages
- 合成後期にタンパク質中に豊富に存在する任意のアミノ基に導入できる可溶化ユニット
- 光照射により、温和な条件で、容易にタグの除去が可能
- インスリン、インフルエンザ由来膜タンパク質の難溶性ペプチドの可溶化・ライゲーション実績あり
Background and Technology
タンパク質の化学合成は、一般的に水系溶媒中でペプチドチオエステルとN末端システイン含有ペプチドを化学選択的に縮合する手法を用いて実施されるが、合成中間体の溶解性が低い場合、伸長や精製が困難となる。そのため、水溶性タグを利用してハンドリングを容易にする手法がとられるが、合成開始時にはペプチドが実際に溶解できるかが不明であり、溶解性が低い場合、既存のC末端残基に導入される水溶性タグは、通常C末端からN末端へペプチド伸長させるため、合成初期段階からやり直さなければならない。また、通例として水溶性タグの構築が複雑で、脱保護に強酸や強塩基を要する等過酷な条件が課題であった。
今回本研究室では、タンパク質中に豊富に存在するアミノ基に導入可能な新規リンカーを開発し、N末端に水溶性タグ分子を導入する手法を見出した。そのためペプチド合成の後期に導入でき、さらに本タグ分子は、光照射によって穏和に脱保護できることから、ペプチド合成プロセスの効率・フレキシビリティを格段に向上可能である。

Data1
難溶性ペプチドとして知られるInsuline A鎖の部分配列のうち、N末端アミノ基へ導入した。

1か所のみでも本光感受性水溶性タグの導入により, ペプチド合成後の十分な水溶性を確保
Data2
本水溶性タグを導入したInsuline A鎖に対して、波長365nmの紫外線を照射した際の水溶性タグの除去が可能であることを実証した。

図2.光照射前(左)と照射後(右)のHPLC結果
Expectations
現段階:光感受性水溶性タグを開発し、疎水性ペプチドへの導入・可溶化・脱保護・ペプチド合成能を実証。
次段階:①本水溶性タグの汎用性評価
②ペプチド合成・精製における最適化・量産性能開発
③本水溶性タグの合成ユニット/プラットフォームとしての実用化
ペプチドおよびペプチド創薬における合成プロセスへの導入、合成ユニットとしての製品化に興味がある企業様、共同研究・共同開発に関心のあるパートナー企業様を募集しております。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。
Researchers
国立大学法人静岡大学 工学部化学バイオ工学科 教授 鳴海哲夫
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