イミダゾール系化合物等を対象とする光応答性プロドラッグ化技術

2024/10/23 16:12 - By Tech Manage

副反応生成物の回避、活性能保持、溶解性を備えるプロドラッグ開発コラボレーション

Advantages

  • 光/環境感受性のプロドラッグ開発技術

  • 副反応を伴う物質の特異性を高めるリポジショニング技術として活用可能

  • イミダゾール化合物以外にも導入できるプロセス

Background and Technology

 低分子化合物の生理活性をより選択的に発現させたいニーズに応えるために、光照射した時のみ生理活性が生じるような化合物に関する‐領域の研究が注目されている。この領域では、従来から知られた阻害剤の分子骨格の一部に光の作用で脱離しうる光反応性保護基、又は光で分子構造が異性化反応を起こす基を、生理活性制御の光スイッチ部位として導入した化合物の合成が志向されている。しかしながら、光で保護基部位を除去する際に、脱離分子部位が副反応生成物として生じてしまう課題、また、光異性化反応を起こす部位が本来の阻害剤の構造とは異なるため、どうしても生理活性が本来の阻害剤よりも弱いという欠点があった。

 本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、分子構造中に2H‐イミダゾール‐2‐アミン骨格を有するイミダゾール系生理活性物質の前駆体が、光などの外部刺激又は外部環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成することを知得し、本発明を完成させた。この技術により、既に既知化合物で光感受性イミダゾール系生理活性物質が見出され、実証データ取得が進んでいる。 尚、本方法は、イミダゾール化合物以外でもプロドラッグ化が実証されており、適用可能な化合物構造が想定されている。これを基に、プロドラッグ化の実現性を検討したい化合物に対し、想定や実証評価が可能である。

Data

SB-431542は神経膠腫の増殖抑制や感染性ウイルス粒子の減少などの効果を期待される薬剤候補物質だが、溶解性などに課題がある物質として知られる。本化合物の前駆体を合成し、その光感受性、ヒト乳腺癌細胞・MDA-MB-231でのin vitro活性を評価した。


上:SB-431542 100mgをDMFに溶解し、水酸化カリウムとフェリシアン化カリウムが溶けた水溶液を加え窒素雰囲気下30℃で撹拌し酸化反応を行った。得られた有機層を濃縮後に逆相液体クロマトグラフィーで精製し1のSB-431542前駆体が得られた。

下:405 nmの光を異なる時間照射した後の1プロドラッグのHPLCクロマトグラム。照射時間依存的に1の前駆体プロドラッグが消失しSB-431542に変化している。

Expectations

現段階: 本プロドラッグ化技術による生成化合物の光感受性、in vitro活性評価。in vivo実証が進行中。

次段階:
1-①. 所望の化合物のプロドラッグ合成・開発
1-② .取得済プロドラッグの開発・安全性評価、照射光・装置の最適化評価
2. 臨床開発

上記1、2の開発コラボレーションに関心のある協働パートナーを募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。

Publications

Journal of the American Chemical Society 2024 146 (26), 18002-18010

Patents

JP2023‐72462 
イミダゾール系生理活性物質の前駆体及びイミダゾール系生理活性物質の生成方法

Researchers

国立大学法人北海道大学 電子化学研究所 教授 玉置 信之

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