Advantages
- 環状PEGによる金属ナノ粒子の修飾は、既存の直鎖状PEG修飾より多機能の向上が可能
- 環状PEG修飾AuNPsは、未修飾AuNPsの30倍以上耐塩性能向上
- 短処理時間で環状PEGの付与が可能:約10min
Background and Technology
金ナノ粒子(AuNPs)、銀ナノ粒子(AgNPs)といった金属ナノ粒子は、バイオセンサー、細胞内プローブ、薬物送達物質、光学造影物質等の用途に応用されている。これらの用途に用いるにあたっては、直鎖状、分枝状、星型、くし形のポリエチレンオキシドなどポリマーを用いた表面修飾によって分散性・滞留性などの性能を安定させている。しかしながら、こういった従来の方法による金属ナノ粒子は、耐塩性が必ずしも十分でなく、粒子が生体内・生体組織中の高いNaCl濃度下や40℃以上の高温環境下で変質又は劣化しやすく、十分な効果が得られない課題があった。本発明は、耐塩性や耐熱性を高め、増感剤や医薬組成物として好適に利用可能な修飾金属ナノ粒子を提供するための技術である。
本技術は、環状ポリエーテルによって修飾された金属ナノ粒子を提供する。末端を持たない環状ポリマーは、直鎖状ポリマーと比較して、ガラス転移温度が高い、体積が小さい、密度が高い、粘度が低い、塩や温度に対するミセルの抵抗性が高い、界面活性が高いなどの特徴がある。特に、本研究室では、環状PEGの物理吸着によってAuNPsとAgNPsの分散安定性が劇的に向上することを報告してきた。これら先行研究を踏まえ、今回AgNPsの調製プロセスにおける環状PEGの利用について検討したところ、環状PEGを用いたAgNPsは、サイズが小さいにも関わらずNaClに対して優れた安定特性を示し、光吸収強度の持続性も劇的に改善した。また、環状PEGで修飾したAuNPsは40℃以上の耐熱性、30倍以上の耐塩性を付加できた。
Data
Ⅰ.耐塩性評価:NaCl濃度に対する修飾AgNPsのUV-Vis吸収強度
修飾銀ナノ粒子を、種々の濃度のNaCl溶液(25mM、37.5mM、44mM、50mM、及び75mM)中に加え試験サンプルを作成した。3時間経過後及び1週間経過後の試験サンプルについて、紫外可視分光法によって最大吸収波長を測定した。最大吸収波長における吸収の減少率(初期の吸収を100%としたときの吸収)を算出したところ、本件環状PEGを用いた銀ナノ粒子(red:c‐PEG5K)の減少率が最も小さく、耐塩性能が高いことが示された。
Ⅱ. 耐熱性評価:加熱後の修飾AuNPsのUV-Vis吸収強度
AuNPs15/PEGなし、AuNPs15/HO-PEG3k-OH、AuNPs15/MeO-PEG3k-OMe、AuNPs15/HS-PEG3k-OMe、およびAuNPs15/c-PEG3kを85℃で4時間加熱し、熱安定性を測定した。AuNPs15/MeO-PEG3k-OMe (Rel. Abs =12%)とAuNPs15/HS-PEG3k-OMe (Rel. Abs =13%)のナノ粒子の大部分は凝集して析出するか、溶存酸素によってエッチングされた。
一方、AuNPs15/c-PEG3kの色とUV-Visスペクトルはほぼそのままであり(Rel. Abs =95%)、加熱に対する優れた分散安定性を示唆している。
Expectations
本修飾ナノ粒子の実用化、製品化に関心をお持ちの企業、または、意図する用途における性能評価や共同研究に関心をお持ちの企業がおられましたら、お気軽にご連絡ください。
Publications
Nanoscale Adv., 2022, 4, 532–545. https://doi.org/10.1039/D1NA00720C
Polymers 2022, 14, 4535. https://doi.org/10.3390/polym14214535
NATURE COMMUNICATIONS 2020, 11, 6089 | https://doi.org/10.1038/s41467-020-19947-8
Patents
- 特許第7376901号 「修飾金属ナノ粒子および医薬組成物」
- 出願済(未公開)
Researchers
国立大学法人北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 分子機能化学分野 准教授 山本 拓矢
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